軍配が土俵に落ちる珍事も…大相撲で相次ぐ“行司”の失態 「土俵からの引退」を50歳にしたらどうか
機敏な相撲に反応できるか
「廻し待った」の失態だけでなく、今場所も力士と行司の「追いかけっこ」は連日のように見られた。本来なら、力士に背を見せてはいけない行司が、突然方向を変えて自分に向かってくる力士から慌てて逃げ惑う姿にハラハラする場面が珍しくない。力士の突進に巻き込まれ、危うく行司が押しつぶされそうになる光景が日常的になっている。
行司は、熟練した読みと身につけた間合いの良さで、そのような不安を力士にも観客にも一切与えないのが務めではないか。そうした技に熟達しているからこそ、「立行司」という最高位を与えられた出世頭なのだと相撲ファンは信じてきた。どうやら現実は違う。
前述したとおり、行司の年齢は驚くほど高い。土俵上で展開される相撲が筋書きのある儀式であるなら、それを裁く行司もしきたりに則った祭主で十分だろう。だが、勝負には筋書きがない。しかも、相撲は変化している。力士の体は大きくなり、外国出身者が多くを占め、パワーもスピードも増強している。咄嗟の変化も鋭くなっている。そうした機敏な相撲に、50代、60代の行司が反応できるだろうか。横綱、大関の取り組みを裁くのに最も適した行司は、65歳のベテランだろうか?
勝負を裁くのは50歳まで
現在、行司の定年は65歳。そこまでほぼ年功序列的に出世を重ねていく。主に結びの一番を裁き、「立行司」と呼ばれる最高位に達するのは60歳になるころだ。
私はこの年齢制度を改めて、「行司の50歳定年」を提言する。行司をやめろというのではない。「勝負を裁く土俵からの引退」に関して、50歳を目安にできないかという意味だ。
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