現役捜査員も「捏造だった」と証言、捜査を仕切った関係者らは事件後に昇進 女性を自殺未遂に追い込んだ警視庁公安部の暴走
「キーマン」は係長
さて、冒頭は、国賠訴訟の証人尋問の場面である。
「証言台に立ったのは、捜査に捏造があったと明言した現役の外事1課員のほか、3名の外事1課OBです。うち1名は、やはり捜査に批判的で“捜査幹部がマイナス証拠をすべて取り上げない姿勢があった”と証言しました」(前出デスク)
一見すると“まさか”の反旗だが、警視庁の幹部はこの事態を予期していたというからなお驚く。
「警視庁では、証人尋問の前に、裁判対策を担う訟務課による“証人テスト”を実施します。今回、裁判で捜査に異議を唱えた2名は“証人尋問本番では捜査の捏造を訴える”とテストの際に語っていた。彼らの意思は固く、幹部らも“無理に翻意を促そうものなら、そのことをさらに問題にされかねない”と考え、説得するのに二の足を踏んだようです」(警視庁関係者)
当事者はどう語るか。件の外事1課OBの自宅を訪ねると、本人が応じて、
「公判の場なら答えることができますが、別の場ではお話しすることはできません。やはり、警察官としての守秘義務がありますから」
前出の高田弁護士が“事件の核心”について語る。
「捜査を当時仕切っていたのは、警視庁公安部外事1課の管理官と第5係長です。特に、キーマンは第5係長のほうでしょう」
事件後に出世
現在、亀有署で警備課長の任にある宮園勇人警視だ。
「宮園警視は部下から“客観的な事実に基づき捜査を行うべきです”と進言されながら、その部下を“事件を潰す気か。責任を取れるのか”と怒鳴りつけ、無理筋な捜査を推し進めた張本人。当時は警部でしたが事件後、出世しました。宮園警視の下で強引な取り調べを行った警部補も事件後、警部に昇進。今は蒲田署に勤務しています」(同)
亀有署の宮園警視と蒲田署の警部。二人は証人尋問にも呼ばれたのだが、
「ともに尋問で捜査を正当化しました。とりわけ宮園警視は“当時は着手すべき事件だった”と開き直りました」(前出デスク)
本誌(「週刊新潮」)は千葉県千葉市のマンションに暮らす宮園警視に接触。しかし、本人はインターホン越しに、
「裁判中なので言えません。(証拠の捏造などについては)それ、違います」
と、答えるのみだった。
先の大川原社長が言う。
「私が自ら罪を認めてしまったら、会社は潰れてしまう。社員や社員の家族のことを考えて踏み止まった」
公安部とは一体、何を守るべき組織なのだろうか。