現役捜査員も「捏造だった」と証言、捜査を仕切った関係者らは事件後に昇進 女性を自殺未遂に追い込んだ警視庁公安部の暴走
「まさに組織的な犯罪」
結局、東京地検は「法規制に該当することの立証が困難と判断」したとして刑事裁判が始まる直前、公訴取り消しを申し立て、21年8月に公訴棄却が決定。大川原社長、島田元取締役、相嶋元顧問の遺族は翌9月、国と東京都を相手に総額5億6500万円の賠償を求めて提訴した。この国賠訴訟の代理人・高田剛弁護士によると、
「島田元取締役は、逮捕後に作成される弁解録取書を勝手に作られていました。本人が“捏造”に気付いたため、捜査員はその弁録を破棄したのですが、本来、弁録は公文書。勝手に破棄などできないはずで、まさに組織的な犯罪ですよ」
先のデスクも言う。
「技術や情報の海外流出を防ぐ『経済安全保障』の旗印の下、政府内には事件摘発の実績を上げたいという空気感があり、それが捜査現場に圧力として働いたと考えられます」
その末に事件をでっち上げ、人ひとりの命をも奪ったのだから、確かに国家による類のない重大犯罪だと言うほかあるまい。
駅のホームで身を投げようと…
大川原社長本人が語る。
「警察としては、島田くんが事件を画策し、僕と相嶋さんが共謀したという筋書きにしたかったはず。だからこそ、任意聴取でも勾留中の取り調べでも、島田くんを徹底的に責め、ポロッと認めてしまうのを待っていたようです」
当局の任意聴取に約40回も応じた、ある女性社員もこう明かす。
「平均で4~5時間、長いと8~9時間、原宿署の窓のない部屋で聴取を受けました。言ってもいないことを調書に書かれて、こちらが“直してください”と求めてもなかなか応じてくれない。その繰り返しです。しかも“他の人たちは事件を認めている”と脅してもくるのです。長時間の聴取を終えたある日、疲れ果てて、思わず地下鉄の駅のホームで身を投げようとしてしまって……」
女性は幸いにも、ホーム備え付けの転落防止ドアに防がれて無事だった。その後、うつ病と診断され、記憶が喚起されそうな方面へと向かう電車には今なお乗れずにいるという。
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