立浪中日、「逆襲のカギ」は岡田阪神にあり? セ・リーグで起きた“不思議な現象”

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投手の与四球に大きな違い

 両チームの売りである投手陣についても大きな差がついているデータがある。それが与四球の数だ(故意四球は除く)。阪神が183でリーグ最少なのに対し、中日は241で巨人と並んでリーグ最下位となっている。

 阪神の先発投手陣を見ると村上頌樹や大竹耕太郎、伊藤将司と制球の良い投手が揃っており、リリーフ陣も四球から崩れるようなケースがない。

 一方の中日は若手の高橋宏斗だけでなく、実績のある柳裕也やベテランの涌井秀章も昨年と比べて、与四球数のペースが増えており、それと比例して球数も多くなっているのだ。それでもチーム防御率に大きな差がないのは、走者を背負ってから粘っているとも言えるものの、四球と球数が増えれば、当然、守りの時間は長くなり、攻撃にも良いリズムで入ることはできない。

 柳や涌井の四球について数字が悪化しているのを見ると、チームの得点力が不足しているから慎重になって四球が増えているという考え方ができるが、どちらにせよ攻守の歯車が上手く噛み合っていないことは間違いないだろう。

 立浪和義監督は、課題の長打力不足を解消しようと新外国人選手の獲得にも積極的にかかわり、また多くのトレードで血を入れ替えるなどチームを作り変えようという意図は確かに感じられる。

 しかしながら、岡田監督のように与えられた戦力を最大限生かして戦うという面が不足している印象は否めない。今回紹介した数字を見ても、やり方によっては中日もチーム成績を伸ばせるというのは明らかである。後半戦、この両チームはさらに差が広がるのか、中日もやり方を変えて巻き返すことができるのか。その点にもぜひ注目してもらいたい。

西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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