果物、酢に乳酸菌飲料… 歯のエナメル質を溶かす飲食物「実名リスト」を公開、歯ブラシの選び方は?

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歯が多く残っている人は、趣味も旅行も楽しい

 このように、歯は健康に直結している。90歳まで生きたいと思っても、寝たきりで過ごすのと、亡くなる直前まで元気でいられるのとではQOL(生活の質)がまったく違ってくる。これは加部院長も同じ思いだ。

「私たちが歯を長く残したいと思うのは、長生きのためではなく、健康寿命を延ばしたいからです。日本人の平均寿命と健康寿命の差は、男性で約9年、女性で約12年もあります。その間は誰かの助けがないと生きられません。でも歯がしっかりしていると、健康寿命が延びるんです。例えば、残存する歯がほとんどなく義歯も使っていない人は歯が多く残っているまたは義歯を入れている人と比べて、認知症のリスクが最大で1.9倍になります。転倒リスクも2.5倍に達します。左右両方でかめないと体幹のバランスが取りにくいからです。また2013年の調査(静岡県)では、歯が20本以上残っている人は趣味も旅行も楽しいと回答している割合が高いですが、歯がない人が楽しいと感じるのは、テレビを見る時が最多でした。楽しく生きるためには歯がいかに大事かということです」

 健康な歯をできるだけ多く残すことは、健康寿命を延ばすだけでなく、人生の質を高めることになるのだ。

奥野修司(おくのしゅうじ)
ノンフィクション作家。1948年生まれ。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞と大宅ノンフィクション賞を受賞。『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『魂でもいいから、そばにいて 3・11後の霊体験を聞く』など著作多数。

週刊新潮 2023年7月20日号掲載

特別読物「50代から『歯が溶ける』」より

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