果物、酢に乳酸菌飲料… 歯のエナメル質を溶かす飲食物「実名リスト」を公開、歯ブラシの選び方は?
歯磨き粉を使ったら口をすすがない
ここまでの話では、高齢者が酸性のものを食べたあと口内を中和するには、キシリトール100%のタブレットが最良とのことだが、私は、加部院長が重曹を薄めて口をすすいだのをヒントに、代用できるものを探してみた。スーパーマーケットで真っ先に見つけたのがアルカリイオン水である。pHは8~9の弱アルカリ性。pH8以上のミネラルウオーターもあるが、こちらのほうが断然安い。私は腎機能に障害はないから飲んでもいいのだが、今のところは食後にこれで口をすすぎ、そのあとで耳の下と顎の下にある唾液腺を刺激して唾液を出すようにしている。
酸蝕を極力避けるとしても、すでに溶けてしまった歯はどうすればいいのか。
「最近の研究で、歯が削れるのは歯磨き粉よりブラシの影響が大きいと分かってきました。だから硬い歯ブラシは使わないこと。普通かやわらかい毛がいいです。また極細毛は歯茎の溝に入って掃除してくれると思われがちですが、実は1ミリも入りません。プラークの除去率を考えると、極細より普通の毛先の方がよいのです。歯磨き粉は研磨剤が入っていないものを多めに取って使うこと。かつて少量を勧めたのは、研磨剤が入っていたからです」
そのうえで以下を考慮して歯磨き粉を選びなさいと言う。
「今は、酸蝕で溶け出した歯のカルシウムとリンをチャージして再石灰化をうながしてくれる歯磨き粉(「クリンプロ歯みがきペーストF1450」など)もあります。ここで大事なのは、ペーストの成分をいかに口の中にとどめておくかで、歯磨き粉を使ったら口をすすがないことです。それが気持ち悪いという人は、水ですすいだあと歯にペーストを塗って寝たほうが絶対にいいです」
健康に直結している
最後に加部院長は、留意してほしいことが2点あると言った。ちょっと意外だが、上下の歯をくっつけないことだ。
「人間が上下の歯をくっつけてもいい時間は、食事のときを含めて24時間のうちわずか17.5分なのです。それ以外は上下の歯が2~5ミリほど離れているのが正常です。かむというのは大事ですが、ストレスをかけすぎると歯は割れやすくなります。そうならないためには、肩の力を抜いてリラックスすること。上下の歯がくっついているのが正常だと思っている方は、それはよくないことだと知ってほしい。口呼吸をすると虫歯や歯周病のリスクが上がりますので、口を閉じたうえで、歯は離れている状態がいいのです」
もう一つは、歯のメンテナンスだ。
「(1)2カ月に1回の歯ブラシ指導だけのグループ、(2)指導と機械を使ったクリーニングのグループ、そして(3)何もしないグループの三つに分けて2年間追跡すると、(2)がベストだと思われたのに、むしろ(1)の方がプラークが少なかったという意外な結果が出ました。これから高齢になられる方は、歯科医院のメンテナンスでブラシの指導を定期的に受けていただきたいですね」
疋田さんは歯をなくしたら認知機能が低下したという。
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