果物、酢に乳酸菌飲料… 歯のエナメル質を溶かす飲食物「実名リスト」を公開、歯ブラシの選び方は?
4人に1人が罹患
さらに、こうした市販のドリンク類は生の果物と違い、酸蝕に加えて虫歯の原因にもなる。酸味料だけでなく大量の砂糖が入っているからである。
「どれぐらいの人に酸蝕があるか調べると、日本人の4人に1人が罹患しています。多いですね。それだけ世の中に酸があふれているということでしょう」
加部院長は、歯がしみる人はできるだけ酸っぱいものを食べるのは避けるようにと言うが、やはり限界はある。とすれば、あとはできるだけ口内のpHを上げるしかない。
「酸っぱいものを食べたら水で口をすすげばいいですかと聞かれるのですが、酸性になった口内を中性に戻すにはどれぐらいすすげばいいかを調べたら、1回10秒間ぶくぶくするのを15回も続けないと中性になりません。しかもすすいだ直後は中性になってもすぐ酸性に戻ってしまう。でも唾液が十分なら自然に中和してくれるのです」
昔から「よくかんで食べなさい」と言われたが、食事で口内が酸性になっても、よくかめば唾液が分泌されて中和してくれるという意味で、まさに理にかなっていたのだ。
口内を中和するには…
若い頃は虫歯にはなっても、酸性の食べ物で歯が溶けるなんてことはなかったはずだ。なぜ年を取ると歯が溶けるのだろう。大きな理由は、十分な唾液が出なくなったからではないだろうか。
唾液の分泌量を調べると、70代の人は20代の人の半分というデータもあるように、年を重ねるごとに唾液の分泌量が減少していく。50代になったら注意が必要だ。
これは私自身も実感していた。つまり酸性のものを食べても中和できなくなったのである。酸性の状態が長く続けば、当然歯は溶けやすくなる。私の歯が溶けたのもそのせいだろう。
ちなみに唾液は口内のpHを中和してくれるだけでなく、虫歯菌が出す酸(乳酸)も中和してくれるという。
「リンゴとリンゴジュースはどちらがいいかというと、リンゴの方が何倍も酸蝕になりにくい。なぜなら、リンゴを食べると唾液が出るからです。唾液は口内を中和してくれるし、仮にpHが変わらなくても唾液が出た方が虫歯にもなりにくいのです。また、リンゴと違い、リンゴジュースは砂糖が入っているものがあるので虫歯にもなりやすい。乳酸菌飲料や野菜ジュースにも砂糖が含まれている場合があるので、注意が必要です」
唾液は歯の再石灰化もうながすというから、実にたくましい味方なのだ。
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