果物、酢に乳酸菌飲料… 歯のエナメル質を溶かす飲食物「実名リスト」を公開、歯ブラシの選び方は?

ドクター新潮 ライフ

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体には良くても歯には悪い食べ物

 加部院長に疋田さんのことを話してみると、確かに乳酸菌飲料で歯は溶けるが、疋田さんの歯が抜けたのは別の原因だろうという。いずれにしろ、私は歯が溶けているなんて今まで言われたことがない。なぜ溶けたのだろう。歯を失うことは健康リスクを上げる大きな要因だ。日を改めて説明していただくことにした。

 乳酸菌飲料なんてどこでも売っている。そんなもので歯が溶けるのだろうか? 加部院長にたずねた。

「歯は外側を覆っている硬いエナメル質と内部の象牙質に分かれますが、エナメル質はpH5.5(pH7が中性。それより数字が低くなるほど酸性度が高い)以下で溶けるのに対して、象牙質はpH6で溶けます。高齢になって歯周病などで歯茎が下がると歯の根っこが見えます。そこは象牙質で柔らかいから、酸性のものを食べると簡単に溶けてしまいます」

 pH6というのはほとんど中性に近い。コーヒー(pH6)やキュウリ(pH5.6)、ペットボトルの紅茶(pH5.5)でも溶けるということなのか?

「はい、溶けるんです。食べ物には意外に酸性のものが多く、グレープフルーツやイチゴ、トマトなどはエナメル質も溶かします。果物はビタミンCなどが豊富で体には良いのですが、歯には良くないということです」

果物はヨーグルトに入れる

 体に良くても歯に良くない例はたくさんあって、たとえば“万能薬”ともいわれる酢もそうだ。穀物酢のpHは2.5~3で、10倍に薄めてもあまり高くならないので、歯にとっては良くない。ちなみに梅干しはアルカリ性食品といわれているが、食べるときは酸性だから要注意だ。

「バナナもpH4.6と酸性なのですが、これは青いバナナであって、熟すると中性に近づきますから歯は溶けません」

 食べるなら熟したバナナがいいということ?

「歯が健康な人は気にしなくていいです。酸で歯が溶けるのを酸蝕(さんしょく)といいますが、しっかりブラッシングをしているのに歯がしみるという人はまず酸蝕を疑ったほうがいいですね。こういう方が果物を食べたいときはヨーグルトに入れるといいです。ヨーグルトは酸性(明治ブルガリアヨーグルトでpH4.3)ですが歯を溶かしません。歯が酸で溶けるというのは、水素イオンが歯に触れてカルシウムイオンとリン酸イオンが溶け出すからですが、そもそもヨーグルトはカルシウムもリンも豊富だから歯は溶けないんです。濃い塩水に塩を入れても溶けにくいのと同じです。ただしヨーグルトにハチミツや砂糖を入れると虫歯のリスクは上がります」

 コーラ(pH2.7)や栄養ドリンク(pH2.9)、果汁100%のジュース(ブドウでpH3.4)など意外にpHが低い飲料が多いことに驚く。成分表示を見ると分かるが、これらに酸味料が入っているからだ。コーラはレモン(pH2.3)に近い。毎日レモンをかじったら歯は溶けるというから、コーラもそうなのだろう。

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