立浪監督は思わせぶりな発言…3試合連続クオリティ・スタートの投手・根尾昂は一軍昇格するか

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昇格を巡るライバルとの比較

 根尾登板の前日の7月13日、その仲地がファーム戦に先発している。阪神二軍に対し、こちらも6イニングを投げて、被安打4、失点2(自責点1)。「失点2」は同じ、数字上では被安打数が少ない「根尾のほうが上」ということになる。

「仲地の球数は109球。コントロールミスや無駄な与四球がなかったわけです。立ち上がりの1イニング目こそ手探りで失点しましたが、尻上がりに良くなって行った感じ」(前出・名古屋在住記者)

 仲地はドラフト指名当時、「球速150キロ強」と紹介されていたせいか、「剛腕」のイメージもあった。しかし、この13日と前回登板の6日のオリックス二軍戦を見ていると、変化球も多彩で緩急はもちろん、低めを丁寧に突いていく技巧派のピッチャーだった。下位打線が相手のときは力で押す場面もあったが6、7割の力で投げている柔らかい印象も受けた。自身の好不調に左右されず、大崩れしないピッチャーである。

「制球力の高さも評価されています。立浪監督が熟考した末に1位指名を決めたのは安定感だと聞いています。ゼロに抑えることがいちばんですが、試合状況を読んで『何点以内に抑えれば』と考えながら投げ込んでいました」(前出・同)

 変化球も多彩だから、相手バッターも狙い球が絞りにくい。

 常に全力投球で、変化球はスライダーとフォーク。投球パターンが変わらない根尾とこの仲地を見比べた場合、どちらを一軍に挙げたいと思うのかは明白だ。

 さらに、仲地について補足すると、5月13日の神宮球場の東京ヤクルト戦で先発として一軍デビューを果たしている。しかし、初回のマウンドを務めた後、左脇腹の違和感を訴えて降板。失点2で敗戦投手に。翌日に出場登録を抹消、以後、リハビリに務めていた。

「一軍昇格をめぐる根尾のライバルは仲地だけではありません。4月に左肘のクリーニング手術を受けたベテランの大野雄大(34)も傾斜を使ったキャッチボールを始めました。今季夏場以降に投げるための手術であり、立浪監督が最下位脱出を諦めない限り、大野の復帰は変わりません」(球団関係者)

 一般論として、ベテランと若手では一軍昇格の判断基準が異なる。若手は二軍での結果を積み上げなければならないが、大野のような実績のある投手は「元気です」とアピールすれば問題はない。また、一軍登板を先に決めて、それを逆算して二軍で調整する場合もある。こうしたファーム状況を聞かされると、立浪監督が根尾を一軍昇格させるかもしれない“思わせぶりな発言”をした理由が分からない。

「昇格させると断言してはいませんが、思わせぶりな発言だったことは間違いない。チーム状態は最悪でしたし、メディアを介して、励ますつもりで言ったのかもしれません。中日もケガ人が多いので、本当に根尾を昇格させなければならない状況になる可能性も否定できませんが」(前出・名古屋在住記者)

打撃練習を再開させている

 こんなこともあったそうだ。根尾は「打撃練習」を再開させていたのだ。これは一体、どういうことか。

 根尾の今季の躓きは制球難だ。コントロールは悪くないほうだったが、昨年オフのトレーニングで体の各箇所に筋肉もつき、「上半身と下半身の使い方がバラバラ。下半身の力がスムーズに伝わっていない」との指摘も受けていた。担当コーチの指摘を受けた根尾は修正に努めたが巧く行かず、

「バッターが踏み出してスイングする動きは、投球フォームにも通じるものがある。だったら、気分転換も兼ねて打撃練習をさせてみるか」

 となって、打撃ゲージに入った。「打撃練習」とは誰が言い出したか分からないが、立ち直るきっかけにはなったようだ。もっとも、そのときの根尾は快音を連発させていたそうだ。

「昨季からマジメに投手の練習をやってきており、昼食の休憩時間も惜しんで練習していました。『野手再転向』なんて冗談でも言えませんでした」(前出・関係者)

 立浪監督は先発投手として根尾を育てていくつもりだが、球種も少なく、仲地のようにゲーム展開を読んで投球するレベルまでは届いていない。しかし、昨季は一軍で25試合に・登板し、3点台の防御率を残している。「投手根尾」は1イニング集中の全力投球をさせて活きてくるタイプなのかもしれない。

 中日が最下位脱出を諦めたら、「来季を見据えて」で根尾を一軍で先発登板させるだろうが、それは立浪監督がもっとも避けたいシチュエーションだろう。

デイリー新潮編集部

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