【最高の教師】クラス裁判で見せた、松岡茉優、芦田愛菜、加藤清史郎の熱演 九条は生き残れるか

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生徒たちに「人間ではない」と言い放つ

 この物語がうまく考えられているところは、タイムリミットが2つあるところ。1つは九条が殺される2024年3月10日。もう1つは叶が不登校になり、やがて死を選ぶ2023年5月23日。九条はそれまでにD組を改革しなくてはならならず、モタモタしていられない。矢継ぎ早に手を打つ。

 同4月上旬、叶はD組で“クラス裁判”にかけられた。九条にいじめを密告したと疑われ、クラスメイトたちから断罪された。判決は「1年間学業縛り3教科の刑」。倫理、現国、地理の教科書を1年間使ってはいけないのだという。

 そもそも判決前から、この3教科の教科書はクラスメイトによる落書きだらけ。使えたものではなかった。その上、叶はクラス全員から仲間はずれにされ、蔑まれていた。

 これでは不登校になっても不思議ではない。だが、クラス裁判直後の教室に九条が現れる。九条は裁判を盗聴、盗撮していた。それをD組に伝えると、「訴えてやる」と凄まれたが、覚醒している九条は少しも怯まない。

「どうぞ訴えてください。その時は私も動画と音声を世の中にアップします」(九条)

 脅しである。これに生徒たちは怒り、「オレたち全員を停学か退学にしたいのか!」と息巻くが、九条は「そんなことはしません」とクールに否定する。生徒たちは無反省で、罰を与えても意味がないからである。

「あなたたちは自分に起きたマイナスの出来事を誰かのせいにして、ぶつけるのが得意な生き物でしょ」(九条)

 九条は生徒たちに向かって「人間ではない」とまで言った。いくら裁判の様子の盗聴と盗撮を武器として握っているとはいえ、このままでは済まない。第2話は九条と生徒たちの第2ラウンドでもある。今後、熾烈な戦いが続くに違いない。

 一方、叶はクラス裁判後、いじめが始まった経緯や心情を約5分にわたって吐露した。いじめが始まる前、自分の趣味のことがSNSで話題になり、少し舞いあがってしまったこと、それが基で「男子に媚びている」などと言われたこと。大抵のいじめは大きな理由なく始まるとされるから、リアリスティックな言葉だった。

松岡、芦田、加藤の熱演も見どころ

 松岡の熱演が光る。九条は力んでしまいがちな役柄だが、淡々としており、それでいて迫力を感じさせる。

 民放連ドラの主演は2作目であるものの、以前からドラマ制作者たちは彼女の力量を高く評価していた。この作品がジャンピングボードになるのではないか。女優としての松岡も覚醒したようだ。

 一方、芦田は叶に成りきり、感情たっぷりで長ゼリフをこなした。このシーンは賞賛されたが、本領を発揮するのは第2話以降だろう。この人の力はこんなものではない。特に日常を自然に表現させると絶品。また、クラス裁判ではD組の29人を相手にしたが、存在感で負けていなかった。さすがである。

 作品を引き締めたのが、タチの悪い生徒のリーダー・相楽琉偉役の加藤清史郎(21)。子役時代からの高い評価はダテじゃない。狡猾そうで憎らしかった。

 悪玉が冴えないと、善玉の九条、叶が光を放てない。加藤はこの作品の成否のカギを握るキーパーソンの1人だ。女子生徒の悪玉筆頭・西野美月役の茅島みずき(19)の存在も目立つ。

 この作品は考察も楽しみの1つ。一番のナゾが九条を以前の人生で殺した生徒が誰なのかであるのは言うまでもない。D組は30人いるが、犯人から除外されるのは叶だ。以前の人生では自ら死を選んでいる。

 犯人は九条が叶を救えなかったことに憤怒した生徒なのか。あるいは全く違うことでも九条は恨みを買っていたのか。それとも、D組卒業生を装った叶の家族なのか。現段階では全く分からないが、徐々にナゾが解けていくだろう。

 一方、やり直し人生でも九条が殺される可能性は捨てきれない。なにしろ以前の人生より敵が増え、むしろ危険性は高まっている。九条は生き残れるのだろうか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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