【最高の教師】クラス裁判で見せた、松岡茉優、芦田愛菜、加藤清史郎の熱演 九条は生き残れるか
松岡茉優(28)が主演する日本テレビの新連続ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(土曜午後10時)は、教育の在り方を問う作品。視聴者側と一緒に教育を考えようとする内容ではなく、刺激的で強烈なメッセージを一方的に放っている。反発も覚悟の上だろう。野心的で面白い。
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「3年B組金八先生」を否定するドラマ
「最高の教師」は教育ドラマの金字塔であるTBS「3年B組金八先生」(1979~2011年)を真っ向から否定する作品だ。
金八先生(武田鉄矢・74)はどんな生徒にも寄り添った。校内で暴力を振るった生徒にも薬物に手を出した生徒にも。どの生徒の人間性も尊重し、誰一人として切り捨てなかった。
一方、松岡が演じる鳳来高校3年D組の担任・九条里奈の場合、寄り添うだけでは生徒をいじめから守れず、タチの悪い生徒たちを変えることも出来ないと気づく。そこで盗聴機や盗撮カメラを使い、生徒たちを監視する。それによって悪行の証拠を押さえる。もはや教育というより、矯正だ。
ドラマ界も教育界も時代とともに変わる。「金八先生」は名作だったが、どんなに良いドラマもいつかは時代と合わなくなる。「最高の教師」には反発の声も上がりそうだが、制作側は覚悟の上だろう。
金八はどこまでも生徒を信じた。性善説だった。だが、今の時代には通用しないのではないか。2021年度のいじめ認知は、全国の小中高、特別支援学校を合わせて61万5351件に達している(文部科学省調べ)。少子化でありながら、過去最多。金八から九条への主役交代は、時代の要請だったのかも知れない。
九条が生徒たちに強硬策を取るようになった動機も現代的でいい。自分が生き残るためだ。もしも、教師としての良心に目覚めてのことだったら、ウソくさい。
九条は2024年3月10日に1度死ぬ。卒業式の日に校舎の上階に立っていたところ、D組の誰かに突き落とされた。しかし、気が付くと、1年前の2023年4月6日にタイムスリップしていた。再び殺されないためには、教師としての自分とD組を変えなくてはならない。
“最低の教師”が新たな人生で覚醒する
以前の人生での九条は、生徒と距離を置いていた。生徒へのちょっとした言動が「ハラスメント」として問題化する時代になってしまったからである。自分を守ろうとしたのだ。
そんな九条の姿勢による犠牲者が、D組の鵜久森叶(芦田愛菜・19)。九条が叶へのいじめに薄々気づきながらも放置したため、不登校となり、やがて自死した。
九条は以前の人生で最低の教師だった。ただし、こんな教師は少なくないはず。それもあって、子供の自死も増加の一途を辿っている。厚生労働省によると、2022年に自死した小中高の児童と生徒は514人。こちらも過去最多だ。日テレがこの作品を制作した大きな理由に違いない。
九条は新たな人生では当初、生徒に寄り添おうとした。金八型の教師を目指した。
「心から困っていることに絶対に寄り添うとあらためて宣言します」(九条)。
だが、生徒たちに舐められただけ。騙されて大金まで巻き上げられた。一方で、叶からは激しく詰められた。
「寄り添うだけで大人が私たちの世界を変えられると思っているのなら、心底軽蔑します」(叶)
寄り添うとは<相手の気持ちに共感する、受け止める、問題を解決するための手伝いを行う>という意味。生徒と距離が生じるわけで、確かにこれでは問題解決につながらないだろう。
叶から詰められたことで九条は覚醒した。死ぬ覚悟で叶を守ろうとする。1度死んでいるのだから、その気になるのは難しいことではなかった。
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