ソフトバンク「スチュワート・ジュニア」がついに開花の兆し…“日本育ちの全米ドラ1”の計り知れない魅力

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日本でのキャリアアップを選択

 来日5年目の大型右腕、ソフトバンクのカーター・スチュワート・ジュニアが、6月18日の阪神戦(甲子園)で、今季の1軍初先発を果たした。

「全体的によかったと思う。ちょっと最初、気持ち的に緊張もあったんですけど、とにかく1球1球、悔いのないようにしっかりと投げ切るというのが自分にとってのメーンテーマ。それはしっかりできたと思います」

 6回途中まで無失点の好投。1回には自己最速の160キロもマークして「球の走りもよかった。体にも全く問題なかった」と振り返る。4回無死二塁の場面では、4番・大山悠輔を138キロのスプリットで、自らの暴投が絡んで1死三塁とされた後にも5番・佐藤輝明に140キロスプリットで連続三振、6番のヨハン・ミエセスを申告敬遠した後の2死一、三塁でも7番・梅野隆太郎を159キロのストレートで空振り三振に仕留め、計8三振を奪っている。

 プロ初勝利こそつかなかったが、24歳の右腕が見せた剛腕ぶりは「日本育ちの全米ドラ1」という、過去に例を見ない逸材がいよいよ、開花の時を迎えようとしているという予兆でもある。

 スチュワートは、高校卒業時の2018年6月、アトランタ・ブレーブスからドラフト1巡目指名を受けながら、身体検査で右手首に異常が見つかるなど契約交渉が最終的にまとまらなかった。そこで日本でのキャリアアップを図る道を選択。2019年5月にソフトバンクと6年という長期契約を結んで来日した。

クイックモーションが苦手

 その5年目となる右腕にとって、常に課題と言われ続けてきたのが、走者を背負ってからの投球だった。盗塁阻止のためのクイックモーションが苦手で、走者が一塁にいるとき、セットでの投球始動から捕手のミットにボールが収まるまでのタイムで、二盗阻止の基準は「1秒2」なのだが、スチュワートはどうしても、これよりも遅くなってしまう。

 極論を言えば、それより遅かろうが、打者を抑えてしまえばいいわけだが、相手だって、その弱点を容赦なく突いてくる。

 5月26日のウエスタン・リーグの阪神戦(鳴尾浜)でも、3回2死から山本泰寛が四球、5回2死から遠藤成が中前打で出塁すると、いずれも次打者の初球に二盗を成功させている。

 その時の捕手・海野隆司は、イニング間のセカンドスローで1秒97(1回守備前)、1秒96(2回守備前)と、こちらは二盗阻止の基準ともいえる「2秒」を切っていただけに、スチュワートの“遅いクイック”が、阪神の連続盗塁成功に多大な影響を及ぼしているのは明らかだった。

 1回、先頭の高山俊に右前打を許し、いきなり走者を背負うと、次打者の山本の初球に153キロをマークするも、スチュワートの始動から捕手のミットにボールが収まるまで「1秒38」。ファウルを挟んでの3球目も154キロだったが、この時の一連の投球動作も1秒35。「あのクイックタイムじゃ……。5年たっても、クイックは変わらない」と小久保裕紀2軍監督は厳しく指摘する。

 クイックがうまくできずに盗塁を許し、得点圏に走者を置いての投球になると神経質になり、今度はコントロールが荒れる、という悪循環が生まれていたのが、これまでのスチュワートだった。一昨年の1軍デビューでも、11試合、23回3分の2を投げて奪三振36の一方で、被安打21、与四球も21という数字が、その“乱調ぶり”を示している。

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