米国がウクライナ軍にクラスター弾供与で、ワイドショーのコメンテーターが浅はか過ぎる発言 「彼らに苛酷な現実は見えていない」
ロシア軍の残虐非道
侵略軍にとって不発弾は地雷代わりだ。不発弾をあえて放置することで、“敵国”の兵士や非戦闘員に被害を与えることを目論む。そして、クラスター弾を発射した位置を記録しておけば、自軍には被害が及ばない。
「ウクライナ国民なら、領土内でクラスター弾を使った場合、不発弾で苦労することなど百も承知です。しかし、大きなリスクが伴ったとしても、ロシアから領土を奪還するためにはアメリカから供与されたクラスター弾を使用するしかないと決断したのです。それを戦火とは無縁の日本人が批判するなど、あり得ない発言ではないでしょうか」(同・軍事ジャーナリスト)
こうした“識者”が知らないだけなのか、意図的に触れないのかは不明だが、そもそもロシア軍はウクライナへの侵略を開始してすぐにクラスター弾を使用している。おまけに、攻撃目標は戦闘員だけではなく民間人も含まれていた。
2022年2月24日、ロシア軍はウクライナの首都キーウなど各地で空爆や砲撃を開始し、ここにウクライナ侵攻の戦端が開かれた。そして、早くも2日後の26日、共同通信は「ロシア軍がクラスター弾使用か 人権団体が4人死亡と発表」との記事を配信した。
ウクライナの苛酷な現実
国際人権団体の調査で、クラスター弾が搭載されたミサイルがドネツク州の病院のそばに打ち込まれたことが分かったのだという。繰り返しになるが、攻撃目標は軍事施設ではなく医療施設だ。記事は、4人が死亡し、10人が負傷したことを伝えた。
「ロシア軍は侵攻当初からクラスター弾で民間人も無差別に攻撃しました。さらに、ミサイルで各都市を破壊し尽くし、マリウポリでは白リン弾による焼夷攻撃を行いました。いずれも国際法違反であることは言うまでもありません。クリミア半島を筆頭に不法占領が続く地域では、ロシア軍は勝手に地雷を埋設し、塹壕を掘りまくって要塞化させています。相次ぐダムの破壊も記憶に新しいでしょう。ウクライナはすでに全土が甚大な被害を受けています。不発弾の問題など比較になりません。クラスター弾の使用を批判する“識者”に、ウクライナの苛酷な現実は全く見えていないのでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)
苦渋の決断を下したのはウクライナだけではない。アメリカも同様だ。“識者”の方々が認識しているかは疑わしいが、アメリカのCNNが「ウクライナがバイデン政権にクラスター弾の供与を要請した」と報じたのは昨年の12月8日だ。
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