巨人の前半戦を総括 中軸を任された秋広優人の台頭が意味すること【柴田勲のセブンアイズ】

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秋広の台頭

 丸佳浩が打撃不振を理由に出場選手登録を抹消された。負傷や体調不良以外での抹消は約2年ぶりだ。

 ルイス・ブリンソンは左手首を痛めて16日に登録を抹消され、背中を痛めている中田翔はスタメンで出場できる状態ではない。途中出場に備えるのがやっとだ。

 坂本勇人が6月23日の広島戦(マツダ)で右太ももの肉離れで離脱して以来、勝ちきれない試合が続いている。

 おまけに打線をけん引してきた岡本和真が7月に入って調子を落としてきた。20本塁打はリーグトップだが打率は3割を切った。淡泊な打撃でボール球を振っている。

 ここに来て投打にわたり心配な材料が噴出した感がある。だが投手では菊地大稀、横川凱、田中千晴、野手では秋広優人、門脇誠、中山礼都ら若手が経験を積んでいる。

 特に大きかったのは秋広の台頭だろう。ヤクルトとの最終戦では6打数2安打、65試合で打率2割9分9厘、8本塁打、25打点だった。惜しくも3割ターンとはいかなかったものの立派な成績だ。

 5月25日のDeNA戦(東京ドーム)で3番に抜てきされるとそこから1試合を除く39試合で中軸を任されている。

 開幕前、誰がこの結果を予想しただろうか。将来的にはともかく、実質1年目でのこの成績は夢にも思わなかったはずである。

 たいしたものだが、逆に言えば秋広に3番を任さざるを得なかった。それだけ打線に苦労してきた。本来主軸を担うはずの選手が機能しなかったということでもある。

 秋広のいいところは難しい球に手を出さないところだ。後半戦に入ると岡本和ともども相手チームのマークは厳しくなる。チャンスを自分のモノにした秋広である。気負うことなく、一打席一打席を大事にしてほしい。

シンプルな思考に

 後半戦は22、23日のDeNA2連戦(横浜)からスタートする。巨人には厳しい戦いが待っていると思う。

 原監督はもっとどっしりと構えてほしい。見ていると投手をコロコロと代えるし、打線も一定しない。

 抑える投手は必ず抑える、打つべき人は必ず打ってくれる。レギュラーはレギュラーだ。あまり考え過ぎず、もっとシンプルな思考にした方がいいのではないか。

 残り60試合、厳しくても逆転の可能性は残されている。まずはDeNA戦に注目だ。
(成績は18日現在)

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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