覚醒した“剛腕”、オリックス「山下舜平大」が明かした“速く鋭いカーブ”の秘訣
最大の武器は「カーブ」
オリックス・山下舜平大は、球宴選手間投票で、ロッテ・佐々木朗希、同僚の先輩・山本由伸を上回る得票数で、投手部門のトップに選出された。
「驚いています。本当にいろんな選手の方々に評価して頂いて光栄ですし、とても自信になると思います」
それは、21歳の若き剛腕が、もうすでに、同じプロの目から見て「本物」であると“認定”された証拠でもある。【喜瀬雅則/スポーツライター】
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福岡大大濠高では甲子園出場経験のなかった右腕だが、2020年のドラフト1位指名でオリックスに入団。近大のスラッガー・佐藤輝明(現・阪神)の1位競合での抽選に敗れると、この逸材を迷いなく「外れ1位」で指名したオリックスの“慧眼”もさることながら、高卒ならば大学に進学したと仮定しての「4年」が育成期間というのが球界の常識でもあるが、それよりも早いどころか、いまやリーグを代表するトップクラスの投手へと駆け上がる“途上”とみえる山下の成長曲線は、実に驚異的でもある。
1メートル98、98キロの右腕が誇る最大の武器は「カーブ」だ。しかも、投球の基本線は、真っすぐとカーブの2種類。これで相手を抑え込んでしまうのだ。
「『ダン』って感じが自分の理想」
ただ「カーブ」といえば、大きな「弧」を描きながら、縦にドロンと落ちてくるイメージが強いが、山下のカーブはむしろ、カーブとスライダーの“中間”のようなイメージだ。
プロ初登板は、2023年の開幕戦。その3月31日に対戦した西武・平石洋介ヘッドコーチはこう証言する。
「カーブって、こう、上から大きく、どろんと落ちてくる感じじゃないですか。でも、山下君のカーブは違うんですよ。こう、ガッ、ガッ、と鋭く曲がってくるんです」
山下に、その反応を伝えてみると「そう思ってくれるなら、めちゃくちゃいいです」と納得の表情を浮かべた。その“秘訣”も明かしてくれた。
「カーブというより、正直、縦スラみたいな感じで投げているんで。ふわっていう軌道よりも、ホントにもう『ダン』って感じが自分の理想なので、自分が思っているのと、そういう反応があって、まあいいのかな、と。狙い通りといえば、狙い通りですね」
それでも、投球時のスロービデオを見ると、やはりオーソドックスな「カーブ」のように、右手親指と人差し指の間から、ボールが抜けて出てきている。握りや投げ方は、明らかに「カーブ」なのだ。
「そうです。全然、スローだと、こんな(手の後ろから抜けるような)感じで抜けてるじゃないですか? でも、投げてる感じはここからこう(ボールを切る動き)なんですよ。スライダーみたいな感じで投げてるイメージなんで、投げている時は、抜いては投げていないです。でも、自分のイメージではここ(リリース)が最高点というか、ここから下にガーンと」
身ぶり手ぶりを交えながら、熱心に説明してくれた。
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