経産省トイレ判決 オウム事件の滝本太郎弁護士は「本音を隠しているかもしれない職員を無視」「日本は一周遅れの議論を必死で追いかけている」

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 産経新聞(電子版)は5月10日、「【LGBT法案】性犯罪目的の男が悪用の懸念 滝本太郎弁護士」との記事を配信した。この時期、国会では「19日から開催されるG7広島サミットまでに、LGBT理解増進法を成立させる」との動きが活発になり、賛成派と反対派が激しい議論を戦わせていた。

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 滝本太郎弁護士は1957年、神奈川県生まれ。1989年にオウム真理教の幹部によって殺害された坂本堤弁護士と親交があり、オウム真理教被害対策弁護団に参加。94年には山梨県の甲府地方裁判所の駐車場でサリンを散布されるなど、合計4回、オウム真理教の信者によって命を狙われた。

 滝本弁護士は産経新聞の取材に、LGBT理解増進法の問題点を以下のように指摘した。

《性犯罪目的の男が女性専用スペースに入りやすくなってしまうことが懸念される。女性のふりではなく、トランス女性のふりで足りる恐れがある。通報しにくくなったり、警察も及び腰になったりしかねない》

 7月11日、「経産省トイレ利用制限訴訟」の最高裁判決が下った。原告は経済産業省に勤務する50代の職員。戸籍上は男性だが、性自認は女性だ。性同一性障害と診断され、ホルモン治療を継続して受診している。戸籍変更に必要な性別適合手術は受けておらず、これについては「健康上の理由」と説明している。

 2010年、この職員は同僚を対象に説明会などを開いた上で、女性の身なりで勤務を開始。その際、経産省は職員に対し、勤務するフロアと上下1階にある女性用トイレの使用を制限した。職員は制限の撤廃を人事院に求めたが認められず、国に処遇改善を求めて提訴した。

問題の多い判決

 2019年、東京地裁は人事院の判定を取り消す原告勝訴の判決を下すも、21年、東京高裁は制限の合理性を認め原告敗訴。ところが今回、最高裁は、「経産省のトイレ制限を妥当とした人事院の判定は、裁量権の範囲の逸脱・乱用で違法」と原告の逆転勝訴を言い渡し、判決は確定した。

 民間団体「女性スペースを守る会」は未手術トランス女性による女性トイレや女湯、シェルターや女性刑務所などの「女性スペース」の利用に伴う問題点を指摘している。

 滝本弁護士は「性自認の法令化の推進論者が議論を拒否し、『差別扇動者だ』と糾弾する姿にカルト性を感じ、深く関与してしまった」と言う。そこで滝本弁護士に最高裁判決の受け止めを訊いた。

「今崎幸彦裁判長は補足意見で『判決は不特定多数の人が利用する公共施設のトイレ利用の在り方に触れるものではない』と付言しました。これは額面通りに受け止めていいと考えます。つまり今回の最高裁判決の“射程距離”は、生活実態など審査した特定人の特定トイレに限られる。それも身体違和がきつく固着しているとされる性同一性障害者について、ということです。公衆トイレのあり方が変わるわけではありません。ならば問題がないのかと言えば、そうではないのです。非常に問題の多い判決であり、困ったものだと言わざるを得ません」

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