「ハヤブサ消防団」は今どき珍しい正統派ミステリー 第1話で分かった4つのナゾとは

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 中村倫也(36)が主演しているテレビ朝日「ハヤブサ消防団」(木曜午後9時)の評判がいい。地方の小さなコミュニティを舞台とする正統派ミステリー。作家・池井戸潤氏(60)のベストセラー小説を、世界観を壊さずに映像化している。なぜ、好評なのか。それを分析し、考察ポイントも挙げたい。

数少ない正統派ミステリー

「ハヤブサ消防団」は、最近のドラマ界では数少なくなってしまった正統派ミステリー。第1話を観た限り、矛盾やごまかし、過度なショーアップがない。今後も推理と人間ドラマを堪能できそうだ。

 小さなコミュニティを舞台とする推理ドラマは、日本では少数派であるものの、ミステリーの本場であるイギリスでは確立されたジャンルの1つ。住民はみんな気心が知れているはずなのだが、誰が犯人なのかが分からない。だから、スリリングで面白い。この設定が第1にいい。

 第2に脚本が出色。池井戸潤氏による原作は売れているだけでなく、ミステリーファンによる評価も高い。その世界観をそのまま脚本化している。

 先が読めず、ナゾがナゾを呼ぶ。また、中村倫也が演じる主人公のミステリー作家・三馬太郎を始め、登場人物のキャラクター造形もしっかりしている。適度にコミカル風味を混ぜてあり、肩が凝らないところもいい。

 このまま原作の世界観を守り続けるなら、犯人はおそらく最終盤まで分からない。そして涙を堪えるのに苦労するほどのラストが待っている。

 先のストーリーを明かすことはもちろん控えるが、この作品全体を読み解くキーワードは第1話の時点で既に太郎が感じた「郷愁」と「地縁血縁」になりそう。テレ朝が放送時期に帰郷シーズンである夏を選んだのは納得である。

「三馬太郎君、消防団に入りませんか!」

 第1話を簡単に振り返る。太郎はがけっぷちの作家。推理小説の賞を受賞し、それを機に会社を辞めて専業作家になったが、鳴かず飛ばず。悶々としていた。

 ある日、太郎は中部地方の山間部にある八百万町ハヤブサ地区の亡父の実家を自分が相続していたことを思い出す。訪ねてみたところ、のどかで平和な同地区がすっかり気に入った。東京都目黒区から移り住む。実のところ、東京での冴えない日々からの逃避でもあった。

 引っ越した早々、同地区の消防や警備などを担うハヤブサ消防分団(通称・ハヤブサ消防団)に勧誘される。団員に囲まれての飲み会の席上だった。

「ここは辺鄙なところやし、みんなで力を合わせて生きていかなあかん。三馬太郎君、消防団に入りませんか!」(分団長で養鶏業の宮原郁夫、橋本じゅん・59)

 消防署は常勤の地方公務員で構成されているが、消防団はほかの仕事を持つ人たちが火災時に活動する組織。身分は非常勤特別職の地方公務員だ。ハヤブサ地区の場合、消防署は30キロ離れているから、消防活動の主力は消防団だった。誰かが団員をやらなくてはならない。

 だが、地域への無関心や若者の減少などから消防団員は全国的に不足。宮原たちも太郎を新戦力として欲しかったのだろう。しかし、太郎はやんわりと断った。

「団と名前がついているものに、あんま向いてないんですよね。応援団とか劇団とか……」(太郎)

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