24年の米大統領選はケネディJr.とトランプの戦いになるか 両者の主張に驚くほどの共通点

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大統領選はポピュリストの一騎打ちになる可能性も

 トランプ氏は常々「我々は最後の戦いに直面している。私たちはディープステート(連邦政府と金融業界などのエリートたちによる秘密組織。一般的には陰謀論とみなされている)を壊滅し、戦争屋を政府から追放する」と訴えている。

 ケネディ氏も同様だ。「プーチン大統領を追放するためのネオコン(ネオコンサバティズム、新保守主義)の陰謀で、既に30万人のウクライナ人が犠牲になった。大統領になったときの最優先事項は『国家権力と大企業権力の腐敗した融合』に終止符を打つこと」と主張している。大統領選の最大の争点の1つである不法移民対策についても、「国境を守れないようでは国家とは言えない。私は国境を閉鎖する」と、民主党主流派と相反する見解を示した。

 ケネディ氏もトランプ氏に負けず劣らずのポピュリストぶりを発揮しているが、米国民の分断が深まる中、ポピュリズム(大衆迎合主義)が次期大統領選の勝敗の鍵を握るとの指摘が出ている(6月7日付日本経済新聞)。かつて人々の帰属意識を高めたのは、教会や労働組合などだった。だが、今はポピュリズムがその役割を果たしているからだ。

 ポピュリズムへの期待は、公約の達成よりも「全米各地で価値観を共有する大勢の仲間との一体感」へと変わりつつある。訴訟をいくつも抱えるトランプ氏が規範に逆らう言動をとればとるほど、支持者は宗教的なカタルシス(精神の浄化)を覚え、彼らの連帯感も強まるばかりだという。

 筆者は米国政治の専門家ではないが、次期大統領選は左右のポピュリストの一騎打ちになる可能性があり、そうなれば、冷戦終了後の世界の安全保障を担ってきた米国は一気に「内向き」化するのではないかとの思いを禁じ得ないでいる。

 ハース氏の不吉な予言(米国が信頼の大黒柱から不安定を引き起こす最も深刻な根源へと激変する)を、日本をはじめ国際社会は真剣に受け止めるべきではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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