リニア建設を妨害する川勝平太・静岡県知事 「第3ラウンドも外堀を埋められつつある。世論の潮目は変わった」
田代ダム案の交渉開始
さらに強い批判のトーンで報じたのが産経新聞だ。4月18日朝刊に「リニア水問題 静岡知事、引き延ばし鮮明 協議入りなお消極姿勢」との記事を掲載した。
記事の最後では政府関係者のコメントとして《引き延ばし以外の何物でもない。こんなのは行政ではない》という批判を紹介している。
流域の3市町は4月20日に国土交通省を訪れ、「より強い指導力を発揮してほしい」とする要望書を提出した。染谷絹代・島田市長は報道陣の取材に「静岡県とJR東海の間の話がもう少し建設的にできるよう、国に調整役をしてほしい」と訴えた。
こうした声に川勝知事が耳を傾けるのかどうかは分からないが、産経新聞(電子版)は6月22日、「リニア、ダム取水抑制案 JR東海と東電側の協議開始」との記事を配信し、YAHOO!ニュースのトピックスに転載された。
記事では《同案は県が着工を認めない主な理由とする大井川の水資源問題の有力な解決策とされる》と伝えたが、これで全てが解決というわけにはいかない。第2ラウンドに関して県の態度は未定であり、さらに第3ラウンドも存在するからだ。
「JR東海は山梨県内のリニア工事で『高速長尺先進ボーリング』を使った調査を行っています。地質の状況や湧水量などのデータを得るためですが、静岡県境に近い場所です。そして川勝知事はこのボーリング調査の中断を求めています。これが第3ラウンドです。なぜ山梨県内での調査について静岡県知事が注文を付けるかといえば、川勝知事が『ボーリング調査で山梨県に発生する湧水は、山梨県の地下水ではなく静岡県の地下水だ』と主張しているからです」(同・担当記者)
荒れた記者会見
川勝知事は「断層が静岡県の地下水を汲み上げる」などと説明したが、専門家らは「科学的ではない」と批判。だが、知事は自説を曲げず、何度もボーリング調査を批判。これには山梨県の長崎幸太郎知事(54)も苦言を呈した。
「長崎知事は5月の会見で、山梨県内のボーリング調査で生じた湧水は山梨県の水というのが常識的な考えと指摘した上で、『山梨県内の活動について、いかなる県であっても、我々の頭越しに何がしかおっしゃっていただくのは願わくばご遠慮願いたい』と、かなり厳しい表現を使って川勝知事を批判しました。この結果、両知事の発言は『山梨の水か、静岡の水か論争』として大きな注目を集めるようになったのです」(同・担当記者)
6月13日に行われた川勝知事の定例会見は荒れた。質疑応答の最中、知事が「水は誰のものでもない」と発言したため、記者が「山梨県で出た水も静岡県の水だという主張はもうしないということでしょうか?」と確認を求めた。
知事は「しません」と答えた。これに記者たちは色めき立ったはずだ。知事がボーリング調査の中止を求める根拠は、「山梨県で出た水は静岡県の水だ」という主張にあったからだ。
ところが、記者が何度も確認を求めるうちに、川勝知事が「山梨の水か、静岡の水かという論争は行わないが、それでも山梨県のボーリング調査は容認しない」と考えていることが明らかになった。
一部の記者は知事の論理破綻を問い詰めたが、知事が考えを変えることはなかった。
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