リニア建設を妨害する川勝平太・静岡県知事 「第3ラウンドも外堀を埋められつつある。世論の潮目は変わった」

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導水路トンネル

 2014年、JR東海は土木の専門家に「大井川の中下流域、実際に人が生活しているエリアに悪影響を与えないためにはどうしたらいいか」と議論を依頼した。

「1年間、議論した結果、トンネル内の湧水を大井川に戻す専用の『導水路トンネル』を作るべきだという結論に達しました。湧き水は基本、勾配によって自然に流れていく形とし、一部必要に応じてポンプを使ってくみ上げ、導水路トンネルに流します。導水路トンネルの“終点”は椹島(さわらじま)という南アルプス登山の拠点になっている場所で、ここで大井川と合流します(同・担当記者)

 ちなみに椹島を地図で見ると、住民がいないような地域であることが分かる。導水路トンネルの長さは11・5キロあり、リニアの静岡工区はさらに北側に位置している。静岡県の最北端という文字通り“人里離れた南アルプスの山中”だ。動物しか住んでいないような場所に深さ400メートルのトンネルを掘ることになる。

第2ラウンド

 2021年3月23日、朝日新聞は「リニア、水資源影響『小さい』 静岡工区の中間報告素案 国交省」の記事を朝刊に掲載した。

《国土交通省は22日、リニア中央新幹線の静岡工区について議論する有識者会議に対し、これまでの議論をまとめた中間報告の素案を示した》

《素案では、大井川の流量についてトンネル湧水を全て川へ戻せば「中下流域での流量は維持される」、大井川中下流域の地下水については大井川の流量が維持されれば「影響は極めて小さい」とした》

 なお、大井川の水量に関するシミュレーションでは、JR東海の解析モデルで行っても、静岡市の解析モデルで行っても、「導水路トンネルを使って大井川上流に戻される水の量は、減少分を上回る」という解析結果になった。

 大井川に戻す水の量が減少分を上回るということは、「トンネルを掘ると大井川の水が減る」ということを否定する結論になったということである。こうした日本を代表する学識経験者の“お墨付き”も得て、この時点で「大井川から毎秒2トンの水が失われる」という懸念は払拭されたことになる。

 大井川の流量減少問題が解決したのだから、さらに何を議論するのかと首を傾げる向きもあるだろう。だが、静岡県とJR東海の間には第2ラウンドと第3ラウンドの議論が残っており、いまだに結論には達していない。

「第2ラウンドの焦点は、『トンネルの工事期間中のごく一時期に例外的に静岡県に水を戻せない期間が生じる。これをどうするか』という問題です。そもそもリニアのトンネルは、山の高さに応じて上がったり下がったりしています。トンネル上部にかかる圧力をなるべく一定にするためで、このため静岡工区のトンネルは山梨側が低く、静岡側が高くなっています。山梨側から掘るなら下から上に掘り上げ、静岡県側なら上から下に彫り下げることになります。ところが両県の境に破砕帯が存在するため、かなりの湧水が出る可能性があり、その水が問題となっているのです」(同・担当記者)

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