リニア建設を妨害する川勝平太・静岡県知事 「第3ラウンドも外堀を埋められつつある。世論の潮目は変わった」

国内 社会

  • ブックマーク

原点は2013年

「お気づきの方もいると思いますが、ラウンドを経るごとに問題となる水の量はどんどん減っていきます。川勝知事は『静岡県内のトンネルで発生する湧水は一滴たりとも失わせるわけにはいかない。全量を静岡に戻してほしい』と要請しており、JR東海にしてみればそれを実現するべく様々な方策を発表しているというのが現状です」(同・担当記者)

 2011年から約3年間にわたって、リニア中央新幹線の環境アセスメント(影響評価)が実施された。読売新聞は同年12月7日朝刊に「リニア沿線の環境評価開始」との記事を掲載。《イヌワシやクマタカなど猛きん類の営巣などを調べる》現地調査を開始したと伝えている。

 2年後の2013年、静岡県は「リニア建設によって県内で水問題が発生する」との懸念を表明。静岡新聞は10月25日朝刊に「県、河川流量減を懸念 大井川水系『今夏以上の節水も』―リニア建設計画」との記事を掲載した。

《静岡市最北部の南アルプス地下を貫くリニア中央新幹線の整備計画で、県は24日、JR東海が予測する工事後の大井川水系の河川流量で試算した場合、渇水で取水制限措置を取った今夏以上の節水対策が必要になる可能性を示唆した》

「大井川に水を返せ運動」

 静岡新聞は同年11月8日夕刊に「『リニア渇水』下流域懸念 JRへ15団体意見書―大井川流量減アセス予測」との記事を掲載した。

 JR東海の予測は、何も対策をとらなければ、リニア完成後に大井川上流部で流量が現況から最大で毎秒約2トン減少するという内容だった。静岡新聞は《毎秒2トンは、上水道を7市約63万人が利用する大井川広域水道企業団の水利権量と同じ》と、まるでリニアの工事を行うと水道から水が出なくなるような説明をした。

「大井川の地下400メートルを通るトンネルからは、必ず湧き水が出ます。湧水によって大井川の水が本当に減るのかという根本的な問題もあったのですが、JR東海側は『対策を講じてトンネル湧水量を極力減らす』と説明していました。ところが川勝知事が、『静岡県内のトンネルで発生する湧き水は全て静岡県の水だから、全てを大井川に戻すべきだ』と主張したのです」(同・担当記者)

 これだと戻しすぎになってしまう可能性があるが、JR東海は最終的には知事の意向に従った。少なくともこの時点では、川勝知事の主張にも納得できる部分があり、広範な世論の支持も得られたようだ。

「戦後の逼迫した電力需要を賄うため、大井川には国策で集中的にダムと水力発電所が建設され、中下流域の一部で水が干上がったことがありました。その影響は1980年代まで及び、流域の自治体が『大井川に水を返せ運動』を展開。水利権を巡って粘り強く交渉してきた歴史的な経緯があるのです」(同・担当記者)

次ページ:導水路トンネル

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[2/6ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。