愛なのか、暴力なのか…フランスで考案された「デートDVチェッカー」日本語版の中身とは

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「良好な関係」から「危険な状況」までの23項目

「デートDVチェッカー」は、誤った認識をあぶり出し、客観化させ、暴力だと明文化させるものだ。記載された23の項目は緑から赤に塗り分けられ、赤くなるほど危険とされている。

段階1:楽しんで!(良好な関係)
「あなたがしたいことを大切にする」「あなたが自由にしていることを喜んでいる」など

段階2:警戒領域、ストップ!(これは暴力)
「あなたのことをバカにする」「あなたの交友関係や服装に文句をつける」「あなたを友達や家族と距離を置かせる」など

段階3:助けを求めて身を守って(危険な状況)
「気に入らないことがあるとキレる」「同意なくあなたの体を触る」「セックスを強要する」など

 原田氏は、デートDVチェッカーを「自分たちの状態を客観的に理解することや、性教育の現場での話し合いのきっかけに活用していただけたらと考えている」と語る。

「デートDVチェッカーは、上部の緑色のところに該当していれば概ね『良い関係』で、黄色以降は『警戒領域』です。この警戒領域にある項目に該当したなら、速やかに自分の身を守ることを考えて、相手から離れることをおすすめします。身体的暴力はすぐに命にかかわる危険性をはらみますが、精神的暴力がもたらす苦痛も同様。精神的暴力が引き起こしたPTSDに、生涯悩まされることもあります」

教育現場はデートDVの指導に手探り…保護者も価値観の更新を

 こうしたTENGAヘルスケアの一連の取り組みの背景には、今年4月より政府が本格的に開始した、子どもたちを性暴力の被害者、加害者、傍観者にさせないための「生命の安全教育」がある。幼児から高校生まで年齢に応じて、「プライベートゾーン」、「他者との適切な距離感」、「性暴力の被害にあった際の適切な対応」などを学び、「デートDVの危険性」についての指導も行われる。

 ただし、これまで学校には、デートDVについて学ぶカリキュラムなどなく、同様に教員の養成課程にも“性教育”に特化した必修科目は存在しなかった。にもかかわらず、指導せざるを得ない学校は混乱しているという。

「現場は現在も手探りで、文部科学省から教材や手引きが公開されているものの、具体的な教材や教える側のノウハウは足りていない状態。性教育を行う医師や専門家などの外部講師を派遣してほしいと都教育委員会に要望する学校は、79%にのぼったそうです」

 東京都が実施した「性教育の実施状況の意識調査」によると、教育の現場から「生殖機能に関する内容だけではなく、性に関する教育は生命尊重、人権尊重の教育であるという認識が薄い」、「情報が大量に溢れている中で正しい知識を指導することが必要であるが、具体的な指導ができない」、「生徒の成育環境の個人差が大きいことへの対応が難しい」などといった課題が寄せられているという。

「子どもは親の影響を受け、真似をして成長していくもの。幼少期に『間違った男女の役割』の刷り込みがあった場合、大人になったとき、それを悪いこととは思わずに、同じことを繰り返してしまう可能性が高いのです。子どもにとって両親は一番身近なジェンダーロール。『自分たちは正しい』と頑なになることなく、このチェッカーを使って、デートDVに当たることを受け入れてしまっていないか、関係性などを見つめ直していただく機会を持っていただければと思います」

 子どもたちが最初に相談するのは親ではなく友人、という調査結果も出ている。「相手から束縛されている」という悩みに、「愛されている証拠」と友人が返し、被害が拡大してしまうケースも想定される。そうした状況を踏まえて、大人は「性のことはちょっと……」と尻込みせず、自身の価値観を更新しつつ、「正しい情報を得られる場所がある」と若者に伝えることが大切だ。

関口裕子(せきぐち・ゆうこ)
映画ライター、編集者。1990年、株式会社キネマ旬報社に入社。00年、取締役編集長に就任。07年からは、米エンタテインメント業界紙「VARIETY」の日本版編集長に就任。19年からはフリーに。主に映画関係の編集と、評論、コラム、インタビュー、記事を執筆。趣味は、落語、歌舞伎、江戸文化。

デイリー新潮編集部

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