台湾で日本をテーマにした宿泊・観光施設が増加 100万円で造った鳥居の効果

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営業休止の施設も…

「ロスト日本旅行」の需要があったこうした施設だが、今ではコロナ禍は収束に向かい、渡航規制も解かれている。今年に入り、日本に向かう台湾人が急激に増え、リアルな日本を享受できるようになった。鳥居で演出した擬似日本施設への客足は伸び悩みはじめている。

 桃園市郊外の食品企業が敷地内に大鳥居と千本鳥居風の道をつくり、日本食店を集めた施設「蛋寶生技不老村」(タン パオ セン チー ブ ラオ ツン)は、一時こそ観光バスが並ぶほどの名所になった。しかし今年の6月で営業休止に追い込まれている。

 施設レベルを問う声もある。「千野村」にやってきていた、日本に暮らしたこともあるという中年女性は辛口だった。

「知り合いに勧められて来てみましたが、料理の内容は日本のレベルには全然及ばない。エビ天は冷凍ですし。まだまだ本格的とはいえませんね。暑い夏は流しそうめんをするとか、食にも工夫をしてもらいたい。日本から料理人を呼んできて作る料理を出したりするなら、何度でも来ますけど」

 たしかに筆者の目から見ても、料理のクオリティはまだまだ。懸命に真似ようとする姿勢はわかるが、いろいろ突っ込みを入れたくなる。台湾料理のエッセンスを入れた創作和食、といった感だった。

 千野村の経営陣は若く、彼らの嗜好を押し出そうとしている。キャンプ場も経営していて、グランピングができるような施設を作ろうと意気揚々だった。「ロスト日本旅行」という心のすき間のなかで誕生した和風アミューズメントは台湾鳥居ブームを生んだが、これからが正念場ということか。

広橋賢蔵(ひろはし・けんぞう)
台湾在住ライター。1965年生、1988年北京留学後、1989年に台湾に渡り「なーるほどザ台湾」「台北ナビ」編集担当を経て、現在は台湾観光案内ブログ『歩く台北』主宰。近著に『台湾の秘湯迷走旅』(双葉文庫)などがある。

デイリー新潮編集部

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