台湾で日本をテーマにした宿泊・観光施設が増加 100万円で造った鳥居の効果
千野村の責任者に聞くと
千野村は、高速道路1号線の岡山インターを降り、さらに20分ほど東へ走らせた山あいの燕巣区(イェン ツァオ チィ)にある。訪れてまず目に入るのは、やはり鳥居。駐車場の前に建つ朱塗りの大鳥居に圧倒される。その先には千本鳥居を真似たような鳥居の道があり、風鈴のトンネルもある。中央の池には温泉をイメージしたのか、白い煙が噴出するスモークが焚かれ、池の間を渡る橋の前では、浴衣姿の女性たちがポーズをつけて写真を撮影していた。
「今は夏真っ盛りなので、夕方以降、やや涼しくなった時間にも楽しめるように、夜の営業もしています」
というのは千野村の責任者、楊元哲さん(30)だ。
「鳥居は台湾元で20万元(約100万円)をかけて造りました。ここはもともと、近隣の人たちが集まって茶芸を楽しむ場所だったんです。その持ち主が施設のオーナーと仲がよく、約2ヘクタールの土地を使わせてもらうことになったんです。そこに『神社をイメージするアミューズメントを作ろう』という流れになったんです。大学時代の仲間を集めて運営しています。もともと、なにか面白いビジネスをはじめようと、台南と高雄に和風居酒屋を展開していた流れもありましたが……。浴衣の無料レンタルが受けたようで、オープン当時は1日5,000人の入場者を記録しました。入場料の200元(約1,000円)はドリンク込の値段です。暑い園内を過ごす際の飲み物に使ってもらおうと」
アミューズメント化された神社
桃園市にある桃園神社も、「ロスト日本旅行」のひと役を買った。この神社は、日本統治時代の1938年に建てられた本物の神社だ。鳥居も残っている。戦前は立派だったというが、現在は横木が一本欠けている。
台湾で建てられた神社の多くは、国民党政権時の「日本の帝国主義的なものは取り除く」という方針のなかで取り壊された。しかし桃園神社は学者や地元の住民の反対運動もあって保存された。いま一帯は「桃園忠烈士及神社文化園区」という名称になっている。この敷地の一部を民間の業者が借り受けてアミューズメント化し、日本から神主を招いてお祓いを受けられる、というサービスも一時行っていたが、戦争で亡くなった中華民国の英雄を祀る場所に神社を復活させることへの批判も多く、日本から呼ばれた神主は予定よりも早く帰国することになった。
とはいえ縁日のような飾りや週末の出店などは今も続いており、アミューズメント化によって桃園神社がリニューアルされ、新しい名所として知名度があがったのはたしかだ。
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