バウアーはまだ甘い…味方の拙守やセコいバントにぶち切れた「投手列伝」

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宇野のおでこをゴツンと直撃

 DeNAのサイヤング賞右腕・バウアーが7月1日の中日戦で味方の拙守にぶち切れ、放送禁止用語を連発するなど大荒れ。その“激おこ”ぶりに対し、SNSなどで賛否両論が飛び交った。そして、過去にも味方の拙守や相手のセコい戦法にぶち切れ、暴れた投手たちがいた。【久保田龍雄/ライター】

“世紀の珍プレー”が演じられた直後に、怒りを爆発させたのが、中日エース時代の星野仙一である。1981年8月26日の巨人戦、星野は6回まで巨人打線をゼロに抑え、2点リードの7回も、2死二塁から山本功児をショート後方に高々と上がる飛球に打ち取った。

 ところが、「これでスリーアウトチェンジ」と思われた次の瞬間、信じられないようなハプニングが起きる。上空を強風が吹き荒れ、「ボールが風で揺れて見えた」という宇野勝がグラブを差し出すと、ボールはグラブではなく、宇野のおでこをゴツンと直撃。まるでサッカーのヘディングのようにポーンと跳ね、軌道を大きく変えたため、カバーに入ろうとしたレフト・大島康徳も捕球できず、左翼ポール際まで転がっていった。

 この間に二塁走者・柳田真宏がホームイン。巨人は思わぬ珍プレーのご利益で1点を返した。その柳田は本塁ベースを踏もうとしたとき、カバーに入っていた星野がグラブを叩きつける姿を見て、「何であんなに怒っているんだろう?」と不思議に思ったという。

 実は、同年の巨人は、この日までセ・リーグ記録の159試合連続得点を続けており、星野はチームの後輩・小松辰雄と「どちらが止めるか」で10万円を賭けていたのだ。

 星野は「あのときは悔しかった。あんな(ヘディング)プレーをオレは初めて見たが、宇野に腹が立ったわけではなく、完封が逃げたと思ったから」と語っている。それでも気持ちを切らすことなく、3安打1失点で完投勝利を挙げたのは見事だった。

 同年9月21日、巨人は因縁の中日に0対4と完封負けし、ついに記録は「174」でストップ。完封したのは、皮肉にも賭けの相手・小松だった。

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