今の芸能界は「弱い者勝ち」? 中田敦彦に高岡蒼佑、あのちゃん…「あの人にいじめられた」トークが席巻するわけ
自虐に代わる新手法? 炎上時代に火の粉をかぶらないための「弱い人」アピール
近年よく、SNSでの誹謗中傷が問題となる。けれどもタレント側がどんなに正論を訴えたところで、「有名税」と開き直られることもあるし、攻撃の手が止まることはないだろう。法的措置を取るのも限界がある。だからこそ、「自分はたたくほどのこともない、弱い人・苦労人です」アピールが出てきたのではないだろうか。
貧乏な生活やいじめられっ子だった過去を語るタレントは昔から多かった。けれども、それをバネにして今成功しています、と結ぶのでは反感を買う。むしろ成功しているように見えるけれど、つらい経験や人間関係の傷を抱え続けていると語る方が好印象を与える。
だからかつてはお笑い界、特に女性を中心に「自虐」という処世術が幅を利かせていたこともあった。しかし多様な生き方やルッキズムへの配慮もあって、自虐はカッコ悪いという価値観になりつつある。
そこで自虐に代わる手法として、「自分は強く見えるが、もっと強い人にいじめられた」と、特定の敵を示す「他虐」フォーマットが増えたのではないだろうか。存在さえ不確かな学生時代のいじめ話より、有名人の名指しはリアリティーがある。
中田さんにせよ、あのちゃんにせよ、どちらかといえば、ふてぶてしさも備えた売れっ子というタレントイメージが先行していた。上沼さんはもはや女帝の域だが、双璧を成す和田アキ子さんも、新人時代に受けた凄絶なイジメを明かしたことがある。他だと「トーク中に足を踏んできたグラドル」を暴露した若槻千夏さん(ちなみに安めぐみさんも被害にあったそう)も、強そうな印象の人だ。
稼いでいて、権力も持ってそうで、図太そう。最も炎上のターゲットにされそうな人たちほど、「実は自分は弱い立場」と言いたがる。それは「構ってほしい」という承認欲求だけでなく、炎上リスクを避けるための彼らなりの生存戦略もあるのではないだろうか。
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