都会人の憧れ「田舎暮らし」の知られざる“大敵”地方出身のライターが移住希望者に必ず「質問」することとは

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都会は虫が出ない

 筆者は埼玉県で生活しているが、秋田県の実家と比べると、あまりに虫が少ないことに驚く。せいぜい飛んでいるのは小さな羽虫くらいで、深夜のコンビニに行くとゴキブリが這いまわっているのを見る、そんな程度だ(これを「そんな程度じゃない!」と言う人は、田舎暮らしは絶対に無理である)。そのぐらい、首都圏は虫と隔絶された生活を送ることができる。

 ところが、田舎に行くと容赦なく虫の洗礼を受ける。昆虫食の対象として大人気のコオロギやイナゴ、蛾、ゲジゲジ、カマドウマ、セミ、ハチ、アブなどが常に出没するのだ。

 夜に自動販売機に行くと、表面に大量の蛾が付着している光景を目にする。釣り銭の取り出し口に蛾が止まっていることもある。家庭菜園をやっているとナメクジも多く出る。ナメクジは虫ではない…とか、分類の問題はどうでもいい。そこらじゅうで飛んでいるトンボなどはかわいい類かもしれないが、それすら苦手という人は要注意だ。

カメムシの恐怖

 秋田県の山間部において避けることができない虫といえば、カメムシである。このカメムシ、首都圏ではほとんど見ることがないが、田舎では頻出する害虫の中の害虫である。秋田県のご当地ヒーロー「超神ネイガー」の敵キャラ「ハンカクサイ」のモデルになっているほどで、ある意味、秋田県を代表する虫といえるかもしれない。

 秋田県はゴキブリが意外と出ないのだが、かわりにカメムシがとんでもなく出る。しかも、想像以上の曲者である。触ると凄まじい悪臭を放つ。さらに、その匂いは服や皮膚に染み付いたら取れない。洗濯物を外で干しているとカメムシが付着し、絶妙に嫌な臭いを置き土産してくれることもある。そのうえ見た目がグロテスクだ。

 秋になると、越冬の準備のため、奴らは家の中に侵入してくる。家の中ではブーンと羽音を立てて飛ぶ。そして、服や本の隙間に挟まることは日常茶飯事だ。筆者は中学時代の体育の時間、友人が柔道着を広げたら中からカメムシが3匹飛び出してきて、更衣室がパニックになった思い出がある。カメムシに慣れているはずの地元民ですらこうなのだから、なかなかの強敵なのである。

 筆者が知っている例ではカメムシが苦手すぎて田舎暮らしを断念した人がいる。その人が東京に戻った時に感じたのは、「あぁ、なんて東京は虫が少なくて快適なんだろう!」ということらしい。

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