痛風予防に「ビールより焼酎」は間違い? 「抜け毛対策に海藻」は根拠なし? 誤解だらけの健康法を科学的に検証

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減塩料理術

 日本人の1日の食塩摂取量は平均約10グラムです。これに対して、WHO(世界保健機関)は成人の食塩摂取量を1日5グラム未満に抑えるべきであるとしています。その差5グラム。WHOが掲げる目標摂取上限量以下に抑えるのは現実的にはなかなか難しい。それもあってか、厚生労働省は、成人男性は1日7.5グラム未満、成人女性は6.5グラム未満を目標摂取上限量に掲げています。

 では、どうやったら減塩に取り組めるのか。それは、舌の仕組みを利用して味を濃く感じるように工夫することです。だしのうまみや香辛料などの辛味、またレモン汁のような酸味を加えることで、少ない塩分でも、舌は塩味を強く感じるようになっています。これを対比効果と言います。

 例えば、野菜でも魚介類でも、ゆでた後にそのお湯を捨ててしまうとお湯とともにうまみが流れてしまいます。しかし、お湯を捨てずにそのまま野菜スープ、魚介スープとして食すと、うまみが残ったままなので塩を少し加えるだけでも対比効果により、濃い味付けに、かつおいしく感じられ、塩分の摂取量を抑えられます。

食品を薬のように考えない

 冒頭で触れたコラーゲンの話に戻ると、コラーゲンが分解されて出てくる短いペプチドやコラーゲンに含まれる特殊なアミノ酸が、肌やその他の細胞に良い影響を与えるといった報告もあります。しかし、繰り返しになりますが、すっぽんなどを食べて摂取したコラーゲンが、そのまま肌に届くわけではありません。

 それではなぜ、すっぽん鍋を食べると肌がプルプルになったと感じることがあるのか。プラセボ効果かもしれませんし、すっぽん鍋に入っている他の食材が効いた可能性もなくはないでしょう。しかし、間違いなくいえるのは、すっぽん鍋であれば野菜類なども入っていて栄養バランスが良いということです。したがって……。

 食品を薬のように考えるのは正しくありません。これを食べればピンポイントで即時に効果が出るという食品はないのです。やはり、究極の健康法はバランスの良い食事の継続を心がけることに尽きます。一方で、ご自分の体の状態を把握して、サプリメントや健康食品を上手に活用すれば、さらに病気や不調を遠ざけることが可能です。正しい情報を選択、活用していくことが重要なのです。

加藤久典(かとうひさのり)
女子栄養大学教授。1961年生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。農学博士。分子栄養学が専門。食と栄養、遺伝子と栄養などについて研究を続けている。今春まで東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻特任教授を務める。『文系のための東大の先生が教える 食と栄養』(監修)などの著書がある。

週刊新潮 2023年7月13日号掲載

特別読売「誤解だらけの『美肌』『薄毛』『痛風』『死亡率』…『科学的に正しい10の新・食常識』」より

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