民放でドラマ枠が増加している理由 「バラエティー量産時代」が終えん?
動画配信による収益確保が重要課題に
実は「王様」は、見逃し動画配信サービス「TVer(ティーバー)」で、お気に入り登録者数130万人超の好成績を収めている。近年、動画配信の再生数が新たな指標となっており、平均視聴率が1桁と振るわなかった長澤まさみ主演の「エルピス」(フジ系)や、広瀬すず主演の「夕暮れに、手をつなぐ」(TBS系)などが、高く評価されているのだ。
コラムニストでテレビ解説者の木村隆志氏に聞くと、
「動画配信を利用するのは主に若年層ですから、その世代に支持される橋本さんのような若い俳優を各局は起用したいと考えています。視聴率獲得が難しくなってCMによる放送収入が減少する中、動画配信における収益確保は重要課題です。初回から見直したいと思わせる連続ドラマを量産できれば、FODなど民放各局独自の有料動画配信サービスの会員増加も見込めます」
対照的な例が、昨年の秋ドラマ「相棒season21」(テレ朝系)と「silent」(フジ系)である。
「後者の視聴率は前者の半分程度だったのに、動画配信の再生数は600万回超と驚異的な数字でした」
そう話すのは、メディアアナリストで次世代メディア研究所の鈴木祐司代表だ。
「刑事モノなどの視聴者はネットに疎い高齢者層が多く、恋愛モノは同世代の若者が観ていることを示す象徴的な例でした。若年層をターゲットとする広告主がどちらに出稿したいかは明らかで、各局は配信を通じたネット広告の収入に大きな可能性を見いだしています」
原点回帰
1970年代のテレビは、午後7時から11時台の3分の1強がドラマだったが、90年代以降は制作費がかかる割には視聴率が取れないとされ、バラエティー番組に取って代わられた。
「テレビ放送開始から70年の節目を迎えた今年、ドラマは息の長いコンテンツとして再び重視され、枠が増加傾向にあるのです。スマホやタブレット端末があれば自由に視聴でき、ネットフリックスなどと提携して海外市場への展開も可能。付随してグッズ販売やイベントでの収入も期待できるので、民放各局はドラマの量産へ舵を切っています」(同)
不朽の名作が生まれた黄金時代への原点回帰は結構だが、数打ちゃ当たると見込んで駄作ばかりとなれば、今度こそ世間からお払い箱となりやしまいか。
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