所持金わずか700ドルで娘をアメリカに行かせたシャラポワ父 ビザ取得にかけた執念とは(小林信也)
「マリア」と呼んで
些細な逸話かもしれないが、6歳のシャラポワは、アメリカに渡った時、ひとつ大きな決断をしている。
本名はマシャ。アメリカではマーシャと呼ばれる。それがいやで彼女は自分を「マリア」と呼ぶよう父に言ったのだ。自らの意思で選んだ新しい人生がその日から始まった。
アメリカでも数々の苦難が父と娘の行く手を阻んだ。入るつもりのニック・ボロテリー・テニスアカデミー(フロリダ)の入学資格は8歳以上。すぐには門が開かなかった。数々の障害にぶち当たりイジメも受けても、そのたび父と娘は人生の綱渡りを成功させる。父の執念と、ボールを打って見せることで指導者たちのまなざしを一変させるシャラポワの才能で窮地を打開した。そうやって普通ではありえない幸運を手繰り寄せ、父娘はウインブルドン女子シングルス優勝までたどり着く。シャラポワが17歳になってまもない初夏だった。
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