「異次元の少子化対策は少子化を加速させる」 橘玲が明かす少子化の“真の原因”
ベストセラー『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)で社会的にタブー視される多くの事実を明るみに出したのは作家の橘玲氏(64)だ。では、日本が抱える最大の難題の一つである少子化問題にはどんなタブーが隠されているのか。
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ほとんど指摘されませんが、日本の最大の問題は高齢者が多すぎることです。その事実を隠蔽(いんぺい)して、高齢者が反発しない範囲で「異次元の少子化対策」をやろうとするから、矛盾が噴出してくるのです。
政治家は選挙がありますから、大票田となっている高齢者層に「負担増を」とは絶対に言えない。戦後の日本社会はいい意味でも悪い意味でも団塊の世代がつくってきました。いまその人たちが労働市場から退場し、後期高齢者になりつつある。彼らは年金がなければ生きていけませんから、「どんなことをしてでも年金を守ります」と約束する政治家と政党に投票するでしょう。
社会保障費は増大し続け、財政を圧迫していきます。以前、霞が関の若い官僚と話していたら「20年たてば高齢者は減っていく。日本の選択は、それまでなんとかしのぐことしかないんです」と言われました。でもその頃には、出産適齢期の女性の数はいまよりずっと減っているでしょう。
母親になることを疑問に思う女性が増えるのは当然
少子化対策の財源としては、医療保険料への上乗せが検討されています。でもこれでは、現役世代の手取りの給与は減り、経済的な不安がさらに大きくなる。「異次元の少子化対策」によって、少子化を加速させてしまうのです。
今後、日本人が減ることが避けられなくなって、政府は人口の1割を移民にして埋め合わせるという皮算用をしています。しかし、どんどん貧乏になる日本に、優秀な外国人が来てくれるでしょうか。東南アジアの人たちが目指すのは、まずは英語圏です。給料が安いうえに、日本語の試験に合格しなければならない介護士や看護師になろうという奇特な外国人は、ほとんどいないんじゃないですか。
私はこれまで「世界はリベラル化している」と繰り返し書いてきました。ここでのリベラルは、「自分らしく生きたい」という価値観を言います。ところが、出産や子育てはキャリアなど人生の選択肢を狭め、自分らしく生きることを諦めなくてはならない。なぜ母親にならねばならないのか、疑問に思う女性が先進国で増えているのは当然のことです。
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