不漁が続くサンマやサバを尻目に「“安い魚”の代名詞」が脚光 水揚げ量日本一「銚子港」で“半年経っても美味しいイワシ”が味わえる理由
実は「日本を代表する魚」
「入梅イワシ」の異名の通り、いま旬を迎えているイワシが、主産地である千葉県銚子市で人気を集めている。イワシは水揚げ量でダントツ1位を誇る、日本を代表する魚でありながら、人気の方はいまひとつパッとしない光り物・青魚。だが、銚子周辺では、料理店関係者の努力や、低調なサバの水揚げによって、まさに「引っ張りダコ」状態。現地では、梅雨明け後の漁獲にも大きな期待が寄せられている。【川本大吾/時事通信社水産部長】
【写真】「熟成塩タレ」で鮮度保持したイワシの刺し身は、歯ごたえもプリップリ
ここ最近、サンマやイカ、サケなどの不漁が囁かれる中、あまり知られていなが水揚げ量トップの魚はイワシだ。昨年まで4年連続で首位の座をキープしている。増え過ぎたせいなのか、近年は不漁となっているサンマの日本近海への来遊を妨げているといった研究者の指摘もある。いずれにせよ、イワシはまさに日本代表の魚なのだ。
刺し身でも、煮ても焼いてもおいしいイワシだが、なにせ魚偏に「弱」と書くほど、鮮度落ちが速く、「安い魚」の代名詞ともなっている。梅雨時に脂がのって旬を迎えるものの、東京など都市部での人気は、いまひとつ冴えない。
都内鮮魚店では、食べ頃のイワシを前面に並べるどころか、丸ごとドーンと売る店は少ない。ご丁寧に頭や内臓を取り除き、「これなら調理しやすいでしょう」と言わんばかりの姿で、他の魚に混じって並べられていることが多い。そういった扱いを見ると、やはり人気がない魚なのか、と感じてしまう。
なぜそこまでイワシの肩を持つのか――。その大きな理由は、銚子市に隣接する旭市にある。眼下に太平洋が広がる高台の料理店と、山間に位置するペンションのような宿泊施設「カントリーハウス海辺里(つべり)」を経営するのが渡辺義美さん。店で扱う食材を銚子港で仕入れている。
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