大谷翔平“規格外”の活躍で思い出す「野茂バッシング」 日本を覆う“他人の挑戦をバカにする”空気感の正体

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他人の挑戦をどうして

 その後、長谷川滋利らがメジャーに移籍し成功を収めたことから「日本人投手はメジャーでも通用する」といった論調が支配的になったが、次に来たのは打者”だった。イチローについては「あんな細いヤツが通用するワケがない」などと言われるも、1年目の2001年は打率.350でMVPと新人王と盗塁王を獲得。2004年には、それまでのメジャー最多安打記録であるジョージ・シスラーの242本を更新し、262安打を記録した。こうしたイチローの活躍により、松井秀喜への風当たりは弱まったものの、その後も、日本人野手が海を渡り凡庸な成績をあげるたびに「さっさと日本に帰ってくればいいんだよ!」と大物野球解説者らが言い出し始める。

 なんで他人の挑戦をそうやってくさすんですか、貴殿? と、私などはいつも思う。日本で最高峰を極めた人物であれば、世界に打って出たいと思うのは当たり前のことだろう。

 結局、日本という国は、挑戦者をバッシングすることにより、挑戦しない自分のことを正当化する傾向がある国なのである。そりゃあ、「失われた30年」にるのは当然だ。大谷だって、プロ野球に入る時に「二刀流なんて無理」と散々言われ続け、「どちらかに集中しなさい!」と大物評論家から批判をされ続けた。結果的には二刀流で新人王を獲得し、「うるさ方」をほぼ黙らせたが、「でも、どちらかに専念する方がいい」と規格外の大谷を、規格内の基準で叩き続ける。

いい加減、出る杭を打つのはやめた方がいい

 次なるバッシングは「メジャーで二刀流なんて無理だ」だったが、結果は大成功。2021年はMVPを獲得し、2022年もMVPでもおかしくない活躍で、今年も多分MVPを獲得する。とにかく「新しいことをするヤツがムカつく」という空気感が日本を覆い続ける以上、もうこの国を見捨てる優秀な人が続出するであろう。松井だってイチローだって結局、拠点はアメリカなわけで、大谷も将来的にはアメリカに住むのでは。

 いい加減、「出る杭を打つ」は日本はやめた方がいい。本当にダサダサ低収入国家として、海外から土地やサービスを買い叩かれるだけになる。そして外国人の男が風俗店の上客になる。もう、白人様と中国や台湾の中流層に傅く人生がこのままだと現実味を帯びることになるだろう。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。最新刊に『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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