父にも母にも愛人が…オープンマリッジな家庭に育った男性の告白「親子関係がそもそも普通じゃなかった」
自分自身が確立していない
20歳になったとき、彼は両親から財産を生前分与された。と同時に母親の戸籍から抜けて自分が筆頭となる分籍を行った。
「結婚すればどうせ親の戸籍から抜けるわけだし、僕はどうでもよかったんですが、母が『大人になったんだから、ひとりの戸籍を持ちなさい』って。母も父も、ひとり戸籍なんですよ。どうもふたりとも、家制度みたいなものに嫌悪感をもっていたようです。戸籍なんてめったに見るものでもないけど、分籍したらなんとなくすっきりはしましたね。ひとりで生きている感じがしたというか」
どういう運命のいたずらなのか、分籍してから1年の間に父も母も急死した。父は交通事故に巻き込まれ、母はそのショックで急に心身が弱ったところに脳梗塞を起こして亡くなった。
「婚姻届は出していなかったし、ふたりともいわゆる『不倫』をしていたのに、それでも本当に特別な関係だったんでしょうね。僕を独立させてさっさと逝ってしまうなんて、どういう親なんだと恨みもしましたよ。まだ50代になるかならないかでしたから」
急に足下がグラグラしたと彼は言う。両親の一周忌を一緒にすませたとき、初めてふたりともいなくなったのだと実感した。自立していたから生き方に悩むことはなかったが、「自分も誰かを愛して、信頼関係を作っていけるのだろうか」とは思ったそうだ。
「気づけば、父と母の馴れそめもよくわからない。僕が産まれるまでどのくらいつきあっていたのか、どういうつきあいをしていたのか、ふたりがそれぞれ外で恋愛するようになったのはどうしてなのか……。聞いておけばよかったとつくづく思いました。母はもともと父のあとを追うつもりでいたのか、みごとに身辺整理をしていて、日記ひとつ残っていなかった」
自分は自分として生きていこう。そうは思ったが、その「自分自身」が確立していない。若いのだから当然だが、彼は焦った。当時つきあっていた彼女ともうまくいかなかったし、あの両親の血を引きながら恋愛能力もないのかと気持ちが沈んだ。
後編【浮気相手にも妻にも殴られ、硬膜外血種で緊急手術…それでも40歳夫は「妻を裏切った感覚がない」という根本的原因】へつづく
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