空前の「出川ブーム」の背景 「お笑いウルトラクイズ」で出川哲朗が役者から芸人に生まれ変わった瞬間

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性格も体型も丸くなり「かわいいマスコット」に

 ただ、この時期には一般女性からのイメージは最悪だった。見た目も、声も、芸風も、何もかもが嫌悪感を生む要素となり、世の女性からは「生理的に無理」と一蹴されてしまうような状態だった。

 しかし、2000年代に入り、本格的なお笑いブームの時代が訪れると、少しずつ空気が変わり始めた。バラエティ番組でも芸人の裏の努力や戦略などが赤裸々に語られるような場面も増えていき、芸人という職業やお笑いという仕事に対する世間の認識が変わっていった。この段階でようやく「リアクション芸も1つの立派な芸である」ということが理解されるようになった。

 さらに、出川自身にも変化があった。若い頃には、周囲の芸人たちに負けないように食らいつくことに必死で、どこかギラギラしている感じがあった。それが余計に女性を遠ざける原因にもなっていた。だが、年齢を重ねるにつれて、性格も体型も丸くなってきた。そして、「キモいオジさん」ではなく「かわいいマスコット」のような性別を超えた存在として認識されるようになった。

 こうして出川はどん底を脱して、女性にも愛される芸人へと上り詰めたのである。彼の芸に対するひたむきな姿勢は、今でも視聴者の心をわしづかみにしている。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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