イギリスは高インフレで不動産バブル崩壊の危機 国民の7人に1人が飢えに直面したという指摘も

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商業用不動産市場の大幅な悪化…住宅市場以上の問題か

 業績悪化につながる可能性が懸念されている英金融機関にとって、政府の介入も頭痛の種になっている。英国政府が6月23日に発表した、住宅ローンの返済支援策 だ。

 最初の支払い滞納から1年間は担保物件の差し押さえを猶予したり、固定金利の契約期間が終わっても最大6カ月間は同じ条件で継続できたりする内容だが、金融機関の業績に下押し圧力がかかることは間違いない。

 住宅市場以上に問題を抱えているのは、商業用不動産市場だろう。住宅に比べて借入比率が高い商業用不動産市場は、金利上昇によって大幅な悪化にあえいでいる。新型コロナのパンデミック以降、在宅勤務が定着したことも災いした。

「欧州の商業用不動産の価値は今後40%下落するリスクがある」という恐ろしい予測(5月11日付ZeroHedge)が出ている現在、筆者は「英国の商業用不動産が最も大きな打撃を受けるのではないか」と危惧している。

 英金融大手HSBCが、ロンドン東部カナリーワーフ地区にある45階建ての超高層ビル(通称HSBCタワー)から同中心部シティのずっと小さなオフィスビルへの本社移転を決定したように、英国の大都市のオフィス需要が急速に冷え込んでいるからだ。

 過去を振り返れば、不動産バブル崩壊後に金融危機が起きたケースが多い。インフレに苦しむ英国が金融危機を起こさないことを祈るばかりだ。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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