イギリスは高インフレで不動産バブル崩壊の危機 国民の7人に1人が飢えに直面したという指摘も

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住宅ローン金利の高騰で、市場も借り手も厳しい状況に

 賃上げ幅がインフレ上昇に追いつかず、英国民の生活は危機にさらされている。英国政府が6月30日に発表した統計によれば、インフレ調整後の1人あたり実質可処分所得は第1四半期に0.9%減少した。

 さらに貯蓄も、統計を開始した1987年以降で初めて減少した。金利上昇に伴い、家計が住宅ローンの返済を加速したことが主な要因だ。第1四半期の住宅ローンの返済額は52億ポンド(約9500億円)と、四半期ベースで最多となった。

 イングランド銀行の利上げによる住宅ローン金利の高騰で、多くの借り手が厳しい状況に追い込まれている。イングランド銀行によれば、今年5月の2年固定の住宅ローン金利は1年前に比べ2.1%上昇して4.73%だった。借り換えを迎える住宅所有者の負担は極めて重い。

 利払い負担の増加が足枷となって住宅購入需要が冷え込んだせいで、英国の住宅市場はスランプに陥っている。英住宅金融企業ネーションワイドが6月30日に発表した6月の住宅価格は、前年に比べて3.5%下落。2009年以来の大幅な落ち込みだ。

 S&Pグローバルが7月6日に発表した6月の英建設業購買担当者景気指数(PMI)は48.9と5カ月ぶりの低水準となった。中でも住宅建設は極度の不振に陥っており、過去14年余り(新型コロナの流行初期の2カ月間を除く)で最大の落ち込みを記録した。

 住宅市場の不調は金融機関の経営にも悪影響を及ぼしている。住宅ローン需要が減少する中、金融機関は少ないパイを奪い合う状況だ。預金金利が上昇しているにもかかわらず、顧客に対して競争力のある低い金利を提供せざるを得ない。

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