イチロー氏、シアトル開催の球宴に「なぜ姿を見せなかったのか」 WBC制覇でも貫いた大谷翔平に「ノーコメント」の不自然さ

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2人の関係がぎくしゃくしているわけではないが

 2人の関係がぎくしゃくしているわけではない。それだけに、イチロー氏が大谷に触れようとしないことには違和感が募るばかりだ。

 イチロー氏の心中を、かつて同氏を取材した駐米ジャーナリストはこう察する。

「イチローは自身の発言の影響力を、よく知っている。それだけに、日本での現役時代からメディアに誤解や曲解されて、ファンに届くことを、ことさら嫌がっていた。アメリカでは取材対応するメディアを選別するようになっていったほど。特に近年、大谷への発言は注目度が高く、自分の考えが正しく伝わらず、一人歩きすることへの懸念が大きいのではないか。例えば、大谷の打撃で技術的な課題に少しでも触れただけで、嫉妬などと誤解されるとか……。イチローにとっては耐えがたいことだと思われる。そうなるぐらいなら一切の言及を避けるというふうになるのは性格的にも腑に落ちる」

 一方で、イチロー氏と同時代にヤンキースなどでプレーした松井秀喜氏は大谷に関するメディアの質問に、気さくに答えてきた。今年6月、ニューヨーク州で恒例の野球教室での取材対応では、「大谷選手が何をしても誰も驚かなくなった。そこがもう彼の存在。自分たちがやっていた時代にはあり得なかったこと。想像できないぐらい、すごいことをしている」と率直に語った。

イチロー氏と対照的な松井秀喜氏

 特に印象的だったのは21年、自身が保持していた日本人のシーズン最多記録31本塁打を、大谷が前半戦だけで更新した時、かつての所属球団でもあるエンゼルスを通じて発表した以下の談話だった。

「大リーグでは私も長距離打者とは呼ばれたことはありましたが、彼こそが真の長距離打者だと感じます」

 NHKの大リーグ解説者が松井氏に感心しながら回想する。

「それまでメジャーで成功した日本人の長距離打者を挙げるなら松井しかいなかった。それでも、アメリカでは50本塁打を放った巨人時代の圧倒的な打撃は影を潜め、こぢんまりとまとまったところがあった。それを認めることにもなるコメントを出したところには松井の懐の深さがよく表れていて、大きな人間だなと思った。こういう類いのコメントを出すことには消極的な選手も少なくない」

 松井氏は今年4月、日本での講演で自身のメジャー時代を述懐し、「今の選手たちから比べると、志が低かったかな。大谷選手を見ていると……」と自虐的ながら彼我の差を素直に認めていたという。イチロー氏とはまさに対照的ではないか。

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