「涙を流す昭恵夫人を見つめて…」 櫻井よしこが明かす安倍元総理の知られざる素顔

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優しく言い聞かせるような口調で…

 だが、突然、昭恵夫人が言った。

「夜も眠れないなんて、どうして分かるの? 寝室に入って見た人がいるわけじゃないでしょ」

 私たちは一瞬、沈黙した。昭恵さんの疑問は、なるほど、分からないでもない。が、総理は「夜も眠れないくらい」と比喩として言ったのではないか。そう思いながら、私は、総理はどう答えるのかと見守った。

 総理は穏やかな表情で昭恵さんを見ている。体をおもむろに昭恵さんの方に向け、左手を昭恵さんの椅子の背に置き、少し前かがみになって包みこむような姿勢で語り始めた。

「あのね、金正恩はいま世界中から制裁を受けているんだよね。圧力を受けてとても困っているの。経済が逼迫(ひっぱく)し国民を十分に食べさせられない。中国との関係もうまくいっていない……」

 言い聞かせるような口調に昭恵さんがうなずく。こんなことは安倍家では珍しくないのかもしれないと感じさせる日常性がそこにあった。

同志であり、守るべき対象

 この会話の少し前、森友学園の話題を昭恵さん御自身が持ち出した。不正確な報道というより、濡れ衣としかいえない非難を浴びていた昭恵さんの瞳から涙が溢れた。私は聞き入りながら、安倍総理を見た。安倍総理は昭恵さんの涙を見詰めていた。「どうしてあげたらいいんだろう」と、心からのいたわりの視線である。苦労をかける。けれど自分の力で守り切るという安倍総理の心の声が聞こえてくるようなまなざしだった。総理にとって昭恵さんはこの世で一番大切な同志であり、守るべき対象だったのだと、深く思う。

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