マイナカード申請中に空き巣が! なりすましでニセ口座開設も可能に 狙われた当事者の嘆きの声
役場は「給付金の申請内容とマイナカードを照合するのを怠った」
マイナンバーカードの普及に伴いさまざまなトラブルが報告されているほか、詐欺の道具に使われるケースも頻発している。当事者の生の声と併せて、詐欺の実例を紹介する。
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「そりゃ初めて聞いた時は驚いたよ。だって私は一度給付金の申請をしていたのに、役所から、同じ名前の人からまた申請が来たって言われたんだから」
とは北日本に住む、さる高齢男性。
「警察に話も聞かれたよ。パソコンで調べると結構、同姓同名がいるんだね。でも、マイナンバーで“なりすます”なんて……」
困惑する“事件”が起こったのは2020年夏。
名古屋市在住の「森進一」という男が、自身の名を利用して詐欺を画策。インターネットで全国の「森進一」氏を検索し、同姓同名の男性が住む自治体に、地元在住と偽ってコロナ対策特別定額給付金を申請した。
その際、彼が身分証明に悪用したのがマイナンバーカード。それぞれの自治体に自らのカードを提出した。給付金の申請名義は各地の「森進一」さんだからそもそも住所が違う。生年月日も異なる。普通はバレる。冒頭は露見したケースだが、石川県能登町だけはまんまとだまされ、名古屋の「森さん」に計50万円を振り込んでしまったのだ。
なぜ能登町は引っかかったのか。
役場に聞くと、
「給付金の申請内容とマイナカードを照合するのを怠ったがゆえのミスです」
と回答。マイナカードを出されたことで役所はゴーサインを出してしまい、逆に“犯人”は、その信用度を利用したと指摘されている。
留守中に空き巣が侵入
マイナンバーカードにまつわるこの種のトラブルは全国で報告されている。例えば、今年4月、香川県高松市に住む88歳の独居男性の元に、市の職員をかたる人物から一本の電話がかかってきた。
「マイナカードを申請すると5万円がもらえますよ」
マイナポイント事業で最大2万円分がもらえることが喧伝されていたのだから、年金暮らしであろうこの男性が「申請で5万円」という言葉を信じ込んだのも無理はない。すぐに市役所に赴いた。その最中、留守宅には空き巣が侵入。帰宅すると部屋中が物色されていたという。
「後に警察から連絡があり、事件を知りましたが……」
とは高松市役所の担当者。
「その男性は申請中、5万円の件については口にされなかったんです。おそらく詐欺師に“そのことは言わないように”と口止めされていたのではないか、と」
実際に金銭的な被害がなかったのは不幸中の幸いだが、事件後に市内に住む男2名が逮捕されている。
詐取の対象は金銭や財産にとどまらず、調査員や手続きの代行を謳って、資産や保険の契約情報などを盗み出そうとする事件が後を絶たないという。
マイナカードの偽造や売買
『これから起こる「マイナンバー犯罪」』の共著がある、元神奈川県警刑事の小川泰平氏は、今後増加するであろうマイナ関連の犯罪についてこう指摘する。
「ずばり“なりすまし”の危険ですよね。他人のマイナカードを何らかの方法で入手する。あるいは偽造する、生活困窮者などから“買う”ことによって、その人になりすまし、銀行口座を開設したり、携帯電話を契約したりする。それは詐欺などさまざまな犯罪の材料として使えるのです」
もちろん、悪いのはカードを悪用する側なのは言うまでもない。しかしながら、取り扱いを誤れば、人生に大きなダメージを与える危険性があることを政府はどこまで認識しているのか。7月13日発売の「週刊新潮」では、全国で頻発するマイナカード関連の犯罪について、さまざまな実例を紹介する。