NHKドラマで「波瑠」の相手役だった俳優が“涙で謝罪” 政界から芸能界まで“性加害”告発が続く台湾版「#MeToo」の最新事情
「芸能人のスキャンダル」にとどまらない複数のポイント
台湾版「#MeToo」の発端は5月末、SNSに投稿された与党・民進党の元職員の訴えだった。協力会社社員からセクハラを受けて上司に報告したが、上司が適切な対応をしなかったという内容だ。これをきっかけに、6月に入ると告発が続出。当初は民進党に関する告発が大半で、天安門事件の元指導者で反中派の王丹氏の名前も出たことから、台湾版「#MeToo」と政治的動機を結び付ける見方も存在する。
ただし、現在はメディア業界やアート界、文学界、芸能界などにも拡大。台湾誌「遠見」ウェブ版のまとめによると、7月7日までの被告発者数は30人近くにのぼる。その大半は告発内容を認めているが、王丹氏は告発内容のすべてを、アーロンは一部を否定している。
そこで巻き起こる議論は、被害者の証言を受け止める第三者の姿勢だ。告発者がSNSなどで直接発信した場合、告発内容は警察などによる事実確認が行われていない。そこで第三者はまず、内容を冷静に受け止めるべきだとする声も多い。今回のようにどちらも有名人である場合、どちらか一方の主張を支持する第三者が、もう一方をネット上で誹謗中傷する展開は台湾以外でもよく見受けられる。
アーロンがヤオ・ルゥの会見で直接謝罪した件も、賛否両論を巻き起こしている。否定的な意見としては「マスコミを前にしたパフォーマンス」。またテレビに出演した弁護士は「被害者を必要以上に萎縮させてしまう可能性が高い」と述べた。
社会とLGBTQ当事者の関係性も論点の1つだ。台湾は4年前にアジアで初めて同性婚を合法化したが、現在も偏見がなくなったわけではない。アーロンの場合、以前の発言や自身のプライベート写真流出騒ぎなどで、性的嗜好はほぼ明らかな状況だった。ただし、生き方に悩んだ時期があったことや、家族との関係が一時険悪だったことなども明かしていた。LGBTQ当事者が受けるプレッシャーやストレスの解消は、台湾だけではなく世界的な課題とされている。
だからといって、過去の行為が許されるわけではない。捜査によって事実と認められた場合、アーロンは相応の罰を受ける。台湾のLGBTQコミュニティには「犯罪とされることは同性愛でなく、同意のない性行為と撮影である」などとあらためて説く動きもある。
さまざまな議論を呼び起こしながら、台湾版「#MeToo」は現在も続いている。