「高齢者を切り捨て」「河野太郎が幹部の口封じ」 自主返納が相次ぐマイナンバーカードの闇
不都合な真実
こうした状況に業を煮やしたのか、今月4日、松本剛明総務相は高齢者に向けて暗証番号の設定がなくても、マイナカードを交付できるようにする方針だと明かした。さらに、河野太郎デジタル大臣も2日、NHKの番組で突然、
「マイナンバー制度とカードが世の中で混乱してしまっている」
「次の更新でマイナンバーカードという名前をやめた方がいいのではないか」
と、語った。
この発言のウラにあるのは「マイナカードのICチップに格納された電子証明書にはマイナンバーが記録されていない」という不都合な真実であろう。実はマイナンバーカードという名称にもかかわらず、プライバシーに配慮し、行政機関間で情報連携する際もマイナンバーは使われない。いわば、カードに記されたマイナンバー自体にそれほど意味はないのである。国民にとっては名称を変えるなんて何をいまさら、と言うほかないが、
「デジタル庁の参与が河野大臣と全く同じ指摘をしています」(政治部デスク)
その参与とは、“ミスター・マイナンバー”と称される向井治紀氏のことだ。
“個人的見解は言うな”
財務官僚だった同氏は内閣官房で長く、マイナンバー制度に取り組んできた。その向井氏が昨年末、TBSの取材に対し「マイナンバーカードではない別の名称がよかった」と本音を吐露している。
かように浮き彫りになる国民意識との“ズレ”。改めて今回のトラブルについての見解を聞くべく、向井氏を電話で直撃すると、
「僕はデジタル庁の参与であって、デジタル庁を代表する立場にはありません。僕が喋ったことが国会で問題になって、“もう個人的見解は言うな”ということになっています」
そう言って、なぜか腰が引けている向井氏。この「僕が喋ったこと」とは、今年4月、日経クロステックのインタビューでマイナンバーの運用方法について問われた際の発言を指す。それが政府の見解と整合性がとれていないとして、国会で追及されていたのだ。
「立憲民主党にさんざんやられたんです。“デジタル庁の向井がこんなこと言って、けしからん”と。ゆえに、僕は一切この件に関しては喋りません。また国会でやられるのは嫌です。大臣からも“もう喋るな”と直接注意を受けたんですから」(同)
さすが河野大臣、キーマンとなるデジタル庁幹部の口を一早く封じていたわけだ。
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