「高齢者を切り捨て」「河野太郎が幹部の口封じ」 自主返納が相次ぐマイナンバーカードの闇

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「これ以上煩雑な業務や手続きが増えたら…」

 そうした感覚は高齢者を介護する立場の事業者にも広がっている。

「マイナ保険証に切り替え始めたという施設はウチも含めてほかでも聞いたことがありません。あまりにトラブルが多いので、どこも慎重になっているのではないでしょうか。安心して使えるレベルにならないとちょっとね……」

 と困惑を隠さないのは、さる都内の特別養護老人ホームの施設長である。

「現在、ウチの施設には36名の入居者がいますが、そのほとんどが認知症を患っています。パートを含め、45名の介護スタッフが交代制で介護にあたっており、正直言って息つく暇もない、手いっぱいの状況です。これ以上煩雑な業務や手続きが増えたらと考えると、不安しかありません」

 この施設では入居者のマイナカードを管理しておらず、所有の有無も把握していないという。

「マイナカードが必要になる局面はこれまでありませんでした。マイナ保険証に移行すれば、医療分野以外の個人情報もひもづいているわけで、抵抗感がありますし、スタッフの負担が増えると予想しています」(同)

 施設側が最も懸念を感じているのが、マイナカードの暗証番号の管理である。

 例えば、一般にマイナ保険証で医師の診察を受ける場合、病院での「オンライン資格確認」が必要になる。その際、カードリーダーにマイナカードをかざし「顔認証」もしくは「暗証番号の入力」で本人確認をすることになっている。

「高齢者切り捨て」

 経済ジャーナリストの荻原博子氏によれば、

「現在、高齢者施設では入居者が保険証を施設側に預けるケースが多いと聞いています。マイナ保険証に一本化されれば、カードとともに暗証番号も預かる必要が出てきます」

 東京都目黒区にある特別養護老人ホーム「青葉台さくら苑」の坂井祐施設長が語るには、

「現在の紙の保険証は事務所内の鍵付きのキャビネットで保管し、開けられる者は限られています。最近の医療機関だと保険証のコピーを保険証として認めてくれないところもあるので、厳重に管理しつつも、夜間の救急搬送などに備え、いつでも取り出せる状態にしておく必要があります」

 マイナ保険証になった場合、どう対応するのか。

「うちには、身寄りも成年後見人もいない、認知症を患う入居者がおられます。その場合、マイナ保険証の申請時に職員が暗証番号を設定し、管理するしかありません。入居者全員の暗証番号を紙でリスト化して、これも鍵をかけて管理することになるのか、わかりませんが、情報漏洩が最も怖いと感じています。泥棒でも入って、マイナ保険証と暗証番号をセットで盗まれたら大変なことになりますから」

 再び、荻原氏の談。

「マイナカードはそういった現場での運用方法が全く想定されていません。デジタル庁が主導なので、現場のことを考えていないのでしょうね。まさに高齢者切り捨てです。さらに、この期に及んで厚労省はマイナカードと従来の保険証を一緒に医療機関に持参するよう呼び掛けています。従来の保険証がなければ安心して診察を受けられないのであれば、マイナ保険証への一本化は悪い冗談としか思えません」

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