ロッテ・佐々木朗希に異変 「剛速球と奪三振」よりも「変化球」にこだわり始めた理由

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「本当はもっと真っすぐを投げて欲しかった」

 令和の怪物が「変化球」にこだわった。これは、今秋の日本シリーズ進出を意識し、かつチームが勝つことをいちばんに考え始めた佐々木朗希(21=千葉ロッテ)の成長とも言えそうだ。

 7月5日の埼玉西武戦に先発登板した佐々木が今季最長の8イニングを投げ、勝利投手となった。被安打5、奪三振11。両リーグ一番乗りでの「今季100奪三振」に到達し、規定投球回数にも再び達して1位に返り咲いたわけだが、同日のピッチングはいつもと違った。

「同日の最速は162キロ。決して調子が悪かったわけではありません」(スポーツ紙記者)

 実は、変化球中心のピッチング・スタイルだったのだ。初回のマウンドで、西武の1番・外崎修汰(30)に初球を左中間に運ばれた。無死二塁、続く2番・源田壮亮(30)にもセーフティバントを決められ、僅か2球で無死一、三塁の大ピンチを招いてしまった。さらに暴投で、一塁走者を二塁に進めてしまったが、ここからギア・チェンジした。スライダー、フォークボールを多投し、マキノン(28)、中村剛也(39)、高木渉(23)のクリーンアップを3者連続三振に斬ってみせた。その後も勝負どころで変化球を駆使するピッチング・スタイルは変わらなかった。とくに効果的だったのは、スライダーである。

「本当はもっと真っすぐを投げてほしかったんですけど(笑)。ああいう投球はもうちょっと年を取ってからでいいと思います。向こうの狙い球が真っすぐだと朗希は悟ったんだと思う」

 試合後、千葉ロッテの吉井理人監督(58)は苦笑いを浮かべながらそう答えていた。

オールスターより意識しているのは日本シリーズ

 佐々木は106球を投げているが、変化球の割合は半分ほど。「令和の怪物」と言わしめたのは、160キロを超える剛速球と「奪三振ショー」が見られるからだが、“変化球主体”のピッチング・スタイルと聞いて、思い浮かぶ情報もある。2年連続パ・リーグ先発投手部門1位に選出された「マイナビオールスターゲーム2023」(7月19日・バンテリンドームナゴヤ、20日・マツダスタジアム)だ。

「佐々木はファン投票の最終結果発表の翌日(6月28日)、京セラドームでのオリックス戦前に会見を開いています」(前出・スポーツ紙記者)

 佐々木は1位に選んでもらったことへのお礼を述べ、「シーズンとは違った経験になるので、楽しみです」とも語った。当然、ファンが期待しているのは奪三振ショーであり、2021年に元巨人のビエイラ(30=ブルワーズ傘下マイナー)がマークした163キロの「球宴最速記録」の更新だ。記者団の質問も球速と三振に集中したが、

「勝負を楽しみたい。でも今年は、しっかりゼロで抑えにいこうかなと思います。去年は直球を投げ過ぎた」

 と、冷静に返していた。初出場だった昨年は1回3安打1失点。奪三振はゼロだったが、14年に大谷翔平(29=エンゼルス)が弾き出した「球宴日本選手最速」の162キロに並んでいる。

「三振よりもゼロに抑える、直球を投げ過ぎたと言ったのは昨年の反省でしょう。オールスターゲームは『花相撲』のような様相もあり、勝手も分からないままその雰囲気に飲み込まれてしまいました。右手中指にマメができ、球宴マウンドが復帰登板も兼ねていました。周囲が球速に期待しているのも分かっていたので、真っすぐばかり投げていました」(前出・同)

 それが一変して、結果にこだわって「ゼロに抑える」と言ったのにはワケがあった。

「セ・リーグは首位・阪神の選手ばかり。30人中11人が阪神選手で、9部門中10人がファン投票で選ばれています。日本シリーズでぶつかる可能性も十分にあるので、『対阪神』のイメージも作っておきたいし、打たれるよりは抑えて、相手にイヤなイメージも植えつけておきたいところです」(球界関係者)

 6月4日のセパ交流戦で、佐々木は阪神打線と対決している 。チームは「0対2」で敗れたが、6回102球を投げて被安打1奪三振数は「10」。今季のロッテは優勝圏内での争いを続けているだけに、球宴でガツンと叩いておきたいとも考えたのだろう。

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