涙ぐましい努力もSNS上には失望感が溢れ…中国共産党にとって真の脅威は若者の失業問題

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若者の失業問題は「政治的な問題の引き金になりかねない」

 政府をあてに出来なくなった中国の若者は、涙ぐましい努力を行っている。

 中国では大学生の就職先として軍隊(人民解放軍)が人気を呼んでいる。北京市ではインターネットで入隊を申し込んだ7000人のうち6000人が大学生だったという。危険が伴うとしてかつては避けられていた軍への入隊だったが、「背に腹は代えられない」というわけだ(6月27日付TBS NEWS DIG Powered by JNN)。

 高等教育を受けた若者たちが、街頭で「知識の露天商」となっていることも話題を呼んでいる(6月16日付クーリエ・ジャポン)。これと関係しているのは、中国政府が雇用対策の一環として「露天経済」を後押しする動きだ。

 政府の狙いはリベンジ消費(自粛生活の反動として期待される消費)が起きているサービス業での雇用拡大だったが、大卒者も自らの学歴を生かすための“苦肉の策”として露天経済に参入している形だ。

「専業子供」の存在も、社会の注目を集めている。専業子供とは、家事をすることで両親から経済的な支援を受ける30~40歳代の若者のことだ。家事を「職業」にしている点で「すねかじり」とは異なるという(6月25日付CGTN Japanese)。新卒者が専業子供になるのも、時間の問題なのかもしれない。

 多大な努力の末に大学を卒業しても、それに見合った職業に就けない現実。SNS上はそれに対する若者の失望感で溢れており、中国政府関係者の間では「(失業問題に)適切に対応しなければ、経済の領域にとどまらず、政治的な問題の引き金になりかねない」と危機感が生まれている(7月3日付ブルームバーグ)。

 国家安全保障に固執する習近平国家主席の意向を受けて、中国全国人民代表大会(全人代)は6月28日、対中制裁や「西側の覇権」に反撃する法的根拠を与えるために「対外関係法」を可決した。だが、中国共産党の統治を揺るがす真の脅威は経済問題、特に若者の失業問題ではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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