抗がん剤治療をせずに「ステージ4から4年」「腫瘍縮小状態を維持」 当事者が明かす「がん共存療法」

ドクター新潮 ライフ

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「今を生きる」

「しかし、著者の選択は違った。標準治療が終わったら、あとは死を待つだけ。本当にそれでいいのか。自身ががん患者になって初めて気づいた違和感。その答えを見つけるために、予後を延長するための試行錯誤を重ね、新しい使命を果たすべく走り始めている。

 この本に対して緩和ケアに関わる医師たちの中には、同志の『変心』に批判や落胆の声も少なくない。しかし、著者は30年前に『病院で死ぬこと』に疑義の声を上げた時にも同様のプロセスを経験している。穏やかな文章の行間に静かな情熱を感じる」

 最後に、読者の皆様に、今、私が取り組んでいる「がん共存療法」やその臨床試験は、ステージ4という限界状況を生きる方々の「今を生きる」を支援する緩和ケアそのものである、と確信していることをお伝えして筆をおきたい。

山崎章郎(やまざきふみお)
医師。1947年、福島県生まれ。千葉大学医学部を卒業し、同大学附属病院などに勤務。90年『病院で死ぬということ』(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)がベストセラーになった。その後は緩和ケアに取り組む。4年前に大腸がんステージ4との診断を受け、抗がん剤に頼らない「がん共存療法」を模索。昨年、その歩みを記した『ステージ4の緩和ケア医が実践する がんを悪化させない試み』(新潮選書)を刊行し、話題となっている。

週刊新潮 2023年7月6日号掲載

特別読物「転移で『ステージ4』から4年 腫瘍は縮小したか拡大したか!? 『病院で死ぬということ』の『緩和ケア医』が選択した『がん共存療法』1年の経過報告」より

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