抗がん剤治療をせずに「ステージ4から4年」「腫瘍縮小状態を維持」 当事者が明かす「がん共存療法」
メディアでの発信
だが、どうやって臨床試験参加者を募集すればいいのだろう。今までの経緯を考えれば、エビデンスもない「がん共存療法」の臨床試験に、直接がん治療医から患者紹介があることは考えにくかった。それでも、勇気を出して複数の医師に患者紹介を依頼した。
また、地域のタウン誌「アサココ」の編集者に「がん共存療法」の臨床試験の取り組みについて説明したところ、12月半ば、タウン誌は1面と2面全てを使って、臨床試験の概要とプロジェクトチームを写真入りで紹介してくれた。
年明けの23年1月に入ると、ぽつぽつと臨床試験参加の打診が入るようになったが、当初期待したようには集まらなかった。それでも、まず参加条件を満たした患者から臨床試験を開始した。参加者はタウン誌の情報によって申し込んできたのだ。この時点でも、それ以降も、残念ながら、治療医からの自発的紹介は一人もいなかった。
しかし、タウン誌の影響か、1月には週刊女性、日刊ゲンダイからの取材依頼があったので、積極的に取材に応じることにした。治療医頼みができない以上、あらゆる機会を捉えて、さまざまな形で情報発信をしようと考えたのだ。2月には、ビデオニュース・ドットコム、読売新聞、家庭画報、3月には週刊朝日の取材を受けた。
臨床試験参加者は、全てそういったメディアの情報を目にした方だった。1月から始まった臨床試験には5月末までに15名ほどの方が登録した。
どんな人が臨床試験に参加?
全員「大腸がん(直腸がんも含む)術後で、肝臓や肺に転移のあるステージ4」の方であり、「標準治療としての抗がん剤治療は選択したくない方」である。
ほとんどの方が、既に、抗がん剤治療を何回か受けているが、病状の改善はなく、副作用もきついため、抗がん剤治療の継続を断念していた。
つまり肺や肝臓への転移が見つかったばかりのステージ4で、これから標準治療としての抗がん剤治療を受けるかどうか悩んだ結果、臨床試験への参加を希望したのではなく、抗がん剤治療は受けてみたが、病状の改善もなく、副作用で苦しんできた結果、これ以上の抗がん剤治療は選択したくないと考えている方々だった。
臨床試験参加希望者の中には、開始予定当日の採血結果で、既に肝機能や腎機能が悪く、その場で臨床試験への参加を断らざるを得なかった方もいたのが実状である。
また、臨床試験を開始してみたものの、病状の悪化が早く、開始から1~2カ月以内に臨床試験の継続を断念せざるを得なかった方もいる。
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