抗がん剤治療をせずに「ステージ4から4年」「腫瘍縮小状態を維持」 当事者が明かす「がん共存療法」
さまざまな応援の声が
一つ目は私の取り組みを知った医療ジャーナリストからのものだ。それは「がん共存療法」の中核薬として使用している糖尿病治療薬「メトホルミン」が、国立がん研究センター中央病院でも膠芽腫(こうがしゅ)という脳の悪性腫瘍の治療薬として、6月末から臨床試験に使用されているという情報だった。
早速、同病院のホームページで確認してみた。膠芽腫は従来の手術、放射線治療、抗がん剤治療を駆使しても予後が悪いことで知られている。その膠芽腫に対する、基礎的研究で分かったメトホルミンの抗がん効果を期待した臨床試験は、まぎれもなく始まっていた。私は、自分の取り組みに一つの支えを得た気持ちになれた。
二つ目は、前記情報を得た数日後、日本財団会長の笹川陽平氏からの突然の電話だった。日本財団は1990年代初頭から、日本におけるホスピス(緩和ケア病棟)や在宅ホスピス(在宅緩和ケア)の広がりに計り知れない貢献をしてきている。たとえば、同財団や関連の笹川医学医療研究財団(現笹川保健財団)は多額な予算のもとにホスピスケア(緩和ケア)に携わる多数の医師や看護師を育成してきた。
そのような状況の中で笹川会長と面識を得ていた私は、出版されたばかりの拙著を謹呈していたのだ。笹川会長は「『がん共存療法』は、とても大切なことだと思う。もし条件が整えば『がん共存療法』の臨床試験を日本財団が助成することも可能である。頑張りなさい」と力強く話してくれた。私は、心の底からの謝意を伝えた。
院長に直訴
そして、その数日後、私はこの二つの朗報を持って、以前私がホスピス医として働いていた東京都小金井市にある聖ヨハネ会桜町病院の小林宗光院長に会いに行った。
小林院長にも事前に拙著を謹呈していた。そして、「がん共存療法」の臨床試験を桜町病院でできないだろうかと直訴した。温厚な紳士である小林院長は、嫌がらず、私の話に耳を傾けてくれた。しばらくのやり取りの後に「まずは、院内の医師等の医療職を対象に『がん共存療法』について説明してくれませんか」と提案してくれた。
こうして7月下旬、桜町病院の会議室で「ステージ4の大腸がん患者を対象にした、第2相臨床試験を念頭に置いた『がん共存療法』外来の提案とご協力のお願い」と題した説明会が開かれた。
私は、がんの代謝特性に基づいた「がん共存療法」の必要性とその理論的背景を、何枚ものスライドを駆使して、説明させてもらった。終了後、一人の医師が、しばらくぶりに学生時代に勉強した生化学を思い出しましたと、にこやかに感想を伝えてくれた。
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