抗がん剤治療をせずに「ステージ4から4年」「腫瘍縮小状態を維持」 当事者が明かす「がん共存療法」
さまざまな忠告、懸念が
その拙著は少なからぬ医療関係者やメディアから冷ややかな視線を投げかけられた。だが、それは予測していたことでもあった。
拙著の出版と前後するように昨年6月23日発売の本誌・週刊新潮の「『病院で死ぬということ』から30年、ステージ4の『緩和ケア医』が辿り着いた『がん治療』の答え」と題した寄稿文の中で私は、拙著を執筆することになった経緯や、ステージ4の大腸がん患者としてのさまざまな思いを書き連ねた。そして、その末尾の項「批判や非難があろうとも」に次のような覚悟も表明した。
「だが、今回の本の概要が身近な人々に伝わると、私の今後を案じてくれる人も増えてきた。既存の複数の代替療法をベースに、私なりの工夫を加えまとめ上げた『がん共存療法』ではあるが、もちろん、現時点で、エビデンスのあるものではない。
いずれはエビデンスを得るための取り組みを始めるつもりであるが、現状では、従来の怪しげな代替療法との見分けが難しいと指摘された。様々な立場の人々から、批判され非難される可能性があるとの忠告も受けた。
結果的に『ホスピス緩和ケア』のパイオニアとして築き上げたキャリアに傷がつくと言う人もいた。それぞれが、私のことを親身になって考えてくれての懸念であることは、私にもよくわかっている」
見て見ぬふりはできない
「それでも私は、自らがステージ4の大腸がん患者当事者になることによって、『抗がん剤治療の現状や公的医療保険の不条理』の前で途方に暮れる、『抗がん剤治療は選択したくない』患者さんたちの置かれている実状が、今まで以上に身に染みてわかるようになったのだ。
現代がん医療の課題に気づいてしまった以上、そして、それを改善できるかもしれない方法があるのに、批判や非難を恐れて、それに取り組みもせず、見て見ぬふりをすることは私にはできない。幸い今は共存できている私のがんも、いずれは進行し、私は死に向かうだろう。
だからその前に、私は、がん医療の課題の改善の、その一つになり得る『がん共存療法』の確立に、全力を尽くしたい。今は、そう生きることが、医者としての大半を緩和ケア医として生きてきた、私の人生の締めくくりなのだと確信している。そして、いつか懐かしき人々に相まみえる日を夢見て、この世での役割を終えるまで、前に向かって歩み続けたいと思う」
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