抗がん剤治療をせずに「ステージ4から4年」「腫瘍縮小状態を維持」 当事者が明かす「がん共存療法」
かつて著書で現代医療に一石を投じた緩和ケア医・山崎章郎(ふみお)氏(75)ががんに襲われた。「抗がん剤治療」一択しかないのか。思索を続けた氏が選択したのは「がん共存療法」。腫瘍の大きさに変化はあったのか。厳しくも温かい周囲の反応とは。1年間の経過報告である。
【写真を見る】自らステージ4のがんを患いながら「がん共存療法」の研究に取り組む山崎医師
2023年4月下旬、いつもの病院でCT検査を受けた。19年5月に判明した大腸がん術後両側肺転移の経過を観るためだ。23年の5月半ば、結果を聞いた。主治医は「放射線科の報告では、肺転移の一部がやや増大傾向にあるということですが、全体としては縮小状態維持のSD(安定している)でいいと思います」と説明してくれた。
私も、指摘された画像を見つめてみた。確かに、前回1月のCTに比べて少し大きくなっているかなとも思った。だが、指摘されなければ、気が付かないほどの変化だった。主治医の言う通り、SDと判断した。
両側肺の多発転移を指摘され大腸がんの最終段階であるステージ4になってから、丸4年が経過したことになる。手ごわいなと思いながらも、取りあえず「がんと共存」できている今に、ホッとした。
がん難民が生まれてしまう
私は、今までに緩和ケア医として、2500人を超えるがん患者さんの人生最終章に同行してきたが、ステージ4の当事者になることによって、また、過酷な副作用の体験やがん治療の現実に鑑みてステージ4以降の抗がん剤治療は選択しなかった者として、従来よりもいっそう切実に見えてきたがん医療の課題を、昨年6月、新潮選書『ステージ4の緩和ケア医が実践する がんを悪化させない試み』にまとめて世に出した。
その中で、ステージ4の固形がん(大腸がんや胃がんなど固まりを作るがん)に対するわが国のがん医療の実状、たとえば、公的医療保険の使える標準治療(抗がん剤)でも、がんの治癒は難しいこと、その目的は数カ月から数年の延命であるが、治療を受ける方の半数以上にはその延命効果もないこと、時には延命どころか副作用で縮命してしまう場合もあること等から、抗がん剤治療を選択したくない方々が、がん難民化している問題などを指摘した。
また、その実状を改善する選択肢の一つを提案すべく、副作用が少なく、理論的であり、高額でない既存の代替療法を自ら実体験することによってたどり着いた「がん共存療法」(MDE糖質制限ケトン食、クエン酸療法、少量抗がん剤治療)についても書き述べた。
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